相続欠格事由5号が問題になる例

掲載日 : 2014年1月31日

相続欠格事由のうち、最近議論の多い5号について検討します。

民法891条5号
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

趣旨
最高裁によると「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対し相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとする」点にあります。(最2小判昭和56年4月3日民集35巻3号431頁以下)
また、1、2号と3乃至5号の趣旨は異なると述べたのと同様に、3、4号と5号の定める行為との間にも随分温度差があります。

(参考)相続欠格事由の趣旨
・1、2号:被相続人らの生命を故意に侵害しようとしたことを理由とするもの
・3乃至5号:被相続人の遺言行為に対する違法な干渉をしたことを理由とするもの

5号を適用すべきか問題となる例(平成9年判決例解説128頁)
5号が問題となる例としては以下のケースが考えられます。

  • 自己に対する全部包括遺贈の趣旨が記載された自筆証書遺言を敢えて他の共同相続人に示さずに(隠匿して)、他の共同相続人すべてがその遺留分相当額以上のものを取得するという遺産分割協議を成立させた相続人(遺留分相当額を取得させている点で他の共同相続人の利益を害してはいません。)
  • 自己に対する全部包括遺贈の趣旨が記載された自筆証書遺言書を、法定相続分の取得でよいと考えて破棄した者

その他、過去の裁判例によると、任意の遺産分割協議をいったんは成立させたが、後にこれに不満を持つに至った共同相続人が、分割協議を不当に蒸し返すための攻撃材料として相続欠格の主張をすることが、しばしばあるようです。

確かに、相続人の一人が遺言書を破棄等することは不当な行為です。しかし、単に自己に有利な内容の遺言書を破棄等したに過ぎない者までを相続欠格にするということは、「あまりにも酷」なので「このような相続人が相続欠格の制裁を受けずに済むような解釈論の構築が、必要不可欠」とされていました。

【二重の故意】
中でも、有力な見解は、二重の故意、即ち、①遺言書を故意に偽造、変造、破棄又は隠匿することに加え、②自らが相続上有利な地位を得ようとする積極的な動機・目的が必要と主張していました(最3小判平成9年1月28日判例解説120頁以下、128頁以下)。
※学説上、各号について二重の故意の要否が検討されていますが、最高裁が二重の故意が必要と明言したのは5号のうちの「破棄・隠匿」事案についてのみです。

そこで、現在では、どのような解釈論が構築・展開されているのか、一見似通った昭和56年判決と平成9年判決を比較しながら、次回以降検討してみることにします。

・昭和56年判決:最2小判昭和56年4月3日
・平成9年判決:最3小判平成9年1月28日

【関連コラム】
相続欠格とは
相続欠格事由5号に関する判例①判決の概要
相続欠格事由5号に関する判例②二重の故意論の解釈

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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