株式上場について⑤業務管理体制の整備(2)

掲載日 : 2014年1月8日

前回のコラムにおいて、業務管理体制の整備のうち、販売管理、購買管理、在庫管理を紹介しました。今回は、固定資産管理、人事労務管理、その他重要と思われる業務管理体制の整備について紹介したいと思います。

固定資産管理体制の整備

固定資産は、金額的に多額になるものが多く、営業的には必要不可欠な重要財産であり、また、会計的には減価償却を通じて長期にわたり大きな影響を及ぼすことになります。
一般に固定資産管理プロセスは、取得、現物管理、評価、処分という各サブプロセスに区分され、以下のような点に留意する必要があります。

  • 適切な承認にもとづいて取得が行われているか
  • 減価償却費は耐用年数、償却率に間違いがなく適切に計上されているか
  • 定期的に現物実査を行うとともに、固定資産台帳と照合されているか
  • 適切な承認にもとづいて除却、売却が行われているか
  • 取得、除売却に際には、適時かつ適切に固定資産台帳に反映されているか

人事労務管理体制の整備
優秀な人材の確保や社員のモチベーションを高めるため、またコンプライアンス上も人事労務管理は重要な管理項目です。さらなる収益力の向上のために、明確な評価制度も事業運営上必要になるものと考えられます。
審査上、特に留意しなければならないのは以下の点になります。

  • 就業規則等の整備運用
  • 労働時間の適正な管理
  • 安全衛生管理体制の整備
  • 労働保険・社会保険の適正加入
  • 従業員の定着率

これまで上場準備の会社を見てきました経験上で付け加えさせていただきますと、ほとんどの会社で問題となるのは、長時間労働の問題とサービス残業の問題です。
労働時間を厳守させることは経営者側も見直す必要があるのですが、労働者側も好んで残業をされている場合も少なくありません。労使ともにコミュニケーションをとることにより、生産性を落とすことのないように対策を講じる必要があります。
また、残業代不払いの問題については、労働基準監督署に指摘され、過去の不払い分を一度に払わされるという例もあります。上場準備が遅れるだけでなく、資金繰りにも大きく影響を及ぼしますので特に留意が必要です。

その他の業務管理体制の整備

①財務管理
資金の出納業務、経理業務は不正につながる危険性が高く、また資金の出入りは日常頻繁に行われることが多いことから、誤謬が発生する可能性が極めて高いといえます。会社の業務を正確かつ効率的に実施する、従業員を守るという観点から、以下のような点に留意する必要があります。

  • 財務業務と経理業務を区分する等、内部牽制の効いた分担になっているか
  • タイムリーディスクロージャーを実施するために十分な人員が確保されているか
  • 手元現金の管理や金庫の管理は適切になされているか
  • 代表者印、銀行印等の印章管理は適切になされているか

②情報システム
情報システムの構築・改善は、早期解決が要請されるものではなく、手書伝票や手書台帳による管理でも正確かつ迅速に処理され、経営上支障のない運用が行われていれば問題はありません。しかしながら、規模の拡大にともなう大量取引の処理や厳しい競争に勝ち抜くための様々なデータの分析、セキュリティへの対応等を考慮すると、依然として人的作業に頼ることはコストの増大を招くだけでなく、機動的な経営の妨げにもなりかねません。
現代の企業経営において、販売管理、購買管理、在庫管理などの基幹業務システムを整備し、その経営基盤を強化するためには、コンピュータを中核とした情報処理システムを有効活用することが不可欠です。情報システムに関しては、以下の点に留意する必要があります。

  • 適切な人員が確保されているか
  • 販売管理や購買管理等の基幹システム間、また会計システムとの連動性は確保されているか
  • プログラムの開発や変更、ソフトの購入等に対して適切な承認を得ているか
  • サーバー等へのアクセス管理は適切になされているか
  • サーバーや端末のセキュリティ管理が適切になされているか
  • 災害の発生、システムダウン等、障害発生時の対応はできているか
  • 外部委託している場合には委託先の品質管理ができているか

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【コラム執筆者】
田中豪経営会計事務所 / 船場中央税理士法人
公認会計士, 税理士 田中 豪