株式上場について③利益管理体制の整備

掲載日 : 2014年1月6日

上場審査の中で最も重要な項目のひとつが利益管理体制の整備です。
上場会社は毎年業績予想を発表する必要がありますので、タイムリーに自社の利益の把握を行えるような体制作りが求められます。
また、発表した業績予想にかい離が生じるとわかった段階で(予想より良い場合でも悪い場合でも)、修正発表をする必要があります。一般にその基準は売上高で10%以上のかい離、経常利益、当期純利益で30%以上のかい離と言われています。

利益管理体制の内容
一般に利益管理体制を構築するにあたり、中期事業計画の作成、予算管理制度、月次決算制度の構築が求められます。どれもみなさんお聞きしたことがある項目かと思いますが、より厳密な作成と高度な運用が求められます。

まず、これらはそれぞれ連動していることが求められます。3年間の中期事業計画の1年目は予算と一致している必要があります。予算は月次で作成され、12ヶ月の合算が年度予算となります。さらにそれぞれの月次予算は月次決算と比較され、毎月、予算実績差異分析を実施し、取締役会に報告される必要があります。子会社を複数持っている企業グループにおいては、連結ベースで作成、運用することが必要となります。

中期事業計画の体系

また、中期事業計画を作成することは以下の意義があります。

  • セルフチェック&コントロールツール
    自社の内部環境・外部環境を分析することによって、将来計画の実現に向けた手順を考えるためのツール
  • コミュニケーションツール
    従業員、得意先、金融機関等に対し、事業の目的や将来のビジョンを明確に伝えるためのツール

予算管理制度における留意点
予算管理制度は、予算と実績との差異を分析してその原因を明らかにすることで、業務をより有効かつ効率的に改善するための施策を講じることができ、また財務報告の信頼性を確保することに役立つ機能を持っています。予算管理制度における留意点は以下のとおりです。

  • トップダウン方式とボトムアップ方式の折衷案で作成されているか
  • 総合予算として作成され、全社的に適用されているか
  • 合理的な根拠があり達成可能な数値目標となっているか
  • セグメント区分別に詳細に作成されているか
  • 予算実績差異分析が行われ、結果が現場にフィードバックされているか
  • 予算差異の責任所在を明確にしているか
  • 連結ベースで作成されているか

月次決算制度における留意点
月次決算制度の意義は以下にあります。
・予算統制のため
・四半期決算、年度決算の作業軽減化のため
・タイムリーディスクロージャーのため

これらを担保するため、以下のことが求められます。

  • 月次決算の正確性
    月次決算においても、未払金の計上や引当金、減価償却費の計上等、発生主義会計に基づいて実施する必要があります。12ヶ月分の月次決算書をたし合わせると、年度決算書が出来上がるイメージです。
  • 月次決算の迅速性
    タイムリーディスクロージャーのため、月次決算は翌月10日前後(早ければ5営業日)で確定する必要があります。
  • 取締役会への報告
    予算実績差異分析や前年度同月対比分析を行い、月次決算書とともに取締役会へ報告する必要があります。従いまして、上場会社では毎月取締役会が行われています。

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【コラム執筆者】
田中豪経営会計事務所 / 船場中央税理士法人
公認会計士, 税理士 田中 豪