不動産を所有していても生活保護を受けることができる場合
2017年1月10日
カテゴリー : 法律と不動産
A市に対して生活保護の受給を申請したところ、相続により他の相続人と共有になっている不動産(土地・建物)の処分・運用(売却・賃貸)を求められました。
現在、私は同不動産に住んでおり、今後も継続して住みたいのですが、これらを手放すことなく生活保護を受けることができないでしょうか。
40代 男性
専門家の回答
弁護士 金 泰弘 先生の回答
あーち法律事務所
回答
不動産を所有しているからといって、ただちに生活保護が受けられないということではありません。事情によっては、所有不動産を処分せずに生活保護を受給できる場合があります。
解説
生活保護を受給するためには、申請者であるあなた自身が、一定以上の資産を保有していないことが原則となります。
しかし、生活保護法による保護の実施要領(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)において、居住用家屋については、「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものを除き、保有を認める(なお、保有を認められるものであっても、当該世帯の人員、構成等から判断して部屋数に余裕があると認められる場合は、間貸しにより活用させること。)」とされており、宅地についても、「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものを除き、当該世帯の居住の用に供される家屋に付属した土地で、建築基準法第52条及び第53条に規定する必要な面積のものは保有を認める」とされています。
つまり、処分価値が利用価値よりも著しく大きいと認められなければ、不動産を保有したままで生活保護を受給できる可能性があります。ですので、まずは双方の価値を試算してみるとよいでしょう。
実際に、質問者様と同様に共有持分を有する場合の申請について、処分価値として、処分の困難性(共有持分だけでは第三者への売却が困難であること、共有者による分割での買取りも不可能であること、物件が古く賃貸にしても賃料が見込めないこと )、利用価値として、申請者の生活状況、申請者が同不動産に居住していくことを前提とした周囲の生活環境等を考慮し、さらに、申請者が高齢であったため、保有する不動産価格の鑑定を行い、平均余命を前提とした住宅扶助の金額との比較も行った上で、 不動産を保有したままでの生活保護の受給(住宅扶助はなし)が認められた事例があります。
なお、上記要件に該当しない場合であっても、保護の急迫性がある場合には、生活保護の支給が実施されることがありますが、その場合には、生活保護の支給後、生活保護法第63条の決定がなされることにより、支給された保護金品の範囲内において保護の実施機関の定める額の返還を求められることがあります。
2017年1月10日
弁護士
金 泰弘
あーち法律事務所
同じカテゴリの相談
- 2019.02.05
- 法律と不動産更新料は賃料の前払的性格?謝礼的な意味?
- 2018.12.18
- 法律と不動産共有財産の管理
- 2018.09.07
- 法律と不動産競売の占有者は落札後に明渡請求が可能か
- 2017.09.07
- 近隣・境界トラブル隣地との間に塀を築造した場合の費用の負担