土地の賃貸借(借地)契約~建物が滅失したら?朽廃とは?~

掲載日 : 2015年8月8日

建物の滅失
他人から土地を借りて、自分名義で建物を建てて居住していました。ところが、建物が火事で焼失してしまいました。この場合に、建物がなくなったら、同時に借地権も消滅してしまうのでしょうか?

旧借地法・借地借家法とも借地期間中に建物が滅失しても借地権は消滅することはありません。
この規定は、当事者の合意の如何を問わず適用されるものであり、仮に「建物が滅失した場合、借地契約は終了する」旨が特約により定められていたとしても、そのような特約は強行法規違反であり、効力が認められず、無効となります。

※賃借人が出火したことにより周辺に損害を与えるなどし、これが契約上の解除事由となっている場合は除きます。

建物の滅失で問題となるのは、その後の契約の存続期間であり、この点は注意が必要です。
土地の賃貸借(借地)契約~建物の滅失と再築①最初の存続期間
土地の賃貸借(借地)契約~建物の滅失と再築②更新後

建物の朽廃
一方、建物が朽ち果てた場合を朽廃といいます。
建物が壊れたのか、朽ち果てたのかの違いはあったとしても、建物が使えなくなったという状態は同じなので、「滅失」と同じに考えてよいようにも思われますが、旧借地法では、「滅失」と「朽廃」では扱いが違っていました。
現在の借地借家法では建物が朽廃しても借地権は消滅しないことになりましたが、旧借地法下での契約においては、借地権が消滅する場合があります。借地法では、「当事者間が契約期間を定めていない場合」には法定期間により期間が定まり、この期間中に建物が朽廃すると、借地権は消滅するとされていました。なお、旧借地法でも、当事者間で契約期間を定めている場合は建物が朽廃しても期間満了まで借地権は消滅しません。
旧借地法で、建物の朽廃により借地権が消滅する場合には、法律上は解約申し入れ等は要求されていませんが、実際は連絡や交渉を行うことが多いでしょう。

建 物  旧借地法による
借地権
借地借家法による
借地権
滅失 借地権の存続期間中 消滅しない 消滅しない
朽廃  期間の定めなし(※1) 消滅する 消滅しない(※3)
期間の定めあり(※2) 消滅しない

※1:契約期間を定めていない場合は、法定期間となる
※2:契約期間を定めた場合はその契約で定めた期間
※3:借地借家法では朽廃による借地権消滅の規定は廃止

建物の朽廃とはどのような状態か
建物に生じた自然的腐食状態により、建物として社会経済的効用を失った場合を指し、地震や火災などの自然災害や、改築のための取壊しのような人為的な原因によるものとは区別されます。
また、外見上はボロボロの建物に見えても、現実に人が居住しているなど建物が利用されている場合には、朽廃と認定されることは無いと思われます。
建物の「朽廃」による借地権消滅が認められた例としては、以下が挙げられるでしょう。

  • 平成2年9月27日東京地裁判決(判時1391号)
    大正15年頃の建築。平成2年5月には壁や床も存せず、屋根も雨をしのげる状態ではない上、建物全体が傾いており、人が居住できる状態ではないことが明確。また、借地人も10年前から居住しておらず、警察からも危険性を理由として取壊し勧告があった場合。
  • 平成5年8月23日東京高裁判決(判時1475号)
    無人のまま長年にわたり放置され、建物の構造部分はほぼ全面的に補修しなければ使用できない状態。当該補修には新築するのと同等の費用を必要とした場合。

【コラム執筆者】
フォーゲル綜合法律事務所 堺事務所
弁護士 藤田 さえ子