囲繞地通行権とは?償金の支払いと自動車での通行

掲載日 : 2015年6月12日

囲繞地通行権とは
「囲繞地(いにょうち)通行権」とは、他の土地に囲まれて公道に通じていない土地(「袋地」と言います)の所有者が、その土地を囲んでいる他の土地(この囲んでいる土地を「囲繞地」と言います)を通行できる権利であり、民法第210条に規定されています。
したがって、袋地の所有者は、囲繞地所有者との間で、通行権設定契約等を締結していなくても、法律上当然に、囲繞地を通行することが出来ることになります。
なお、民法の現代語化によって、「囲繞地」という言葉自体は法文上使われなくなっています。

囲繞地通行権の成立要件
囲繞地通行権の成立要件は、民法第210条に規定されるとおり、「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者」であることです。
かかる土地の所有者は、「公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行すること」ができます。

償金の支払い(囲繞地通行権の内容)
囲繞地通行権は、土地を囲んでいる囲繞地を通行できる権利であり、囲繞地所有者の意思に関係なく認められます。これは、かかる権利を認めなければ袋地の利用が著しく阻害されてしまうことから、袋地所有者の便宜のために認められた権利ですが、他方で、囲繞地の所有者にとっては、自分の土地を勝手に利用されてしまうという不利益が課されることとなります。
そのため、民法は、囲繞地通行権の権利内容を以下のとおり規定し、袋地所有者のための権利を認めつつ、出来るだけ囲繞地所有者の負担を軽減するようにしています。
まず、囲繞地を通行する際には、「通行の場所および方法は、…通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害がもっとも少ないものを選ばなければならない」(民法第211条第1項)とした上で、「…通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して、償金を払わなければならない」(民法第212条本文)と規定しています。
したがって、囲繞地通行権は、できるだけ囲繞地の所有者に迷惑がかからない方法でのみ認められ、さらに、それでも損害が発生するような場合は、損害についての償金を支払うことも必要になってきます。
また、たとえば土地を分割することで、袋地を自ら作り出したような場合には、その分割した土地の上についてのみ通行権を認める(民法第213条第1項)として、囲繞地通行権を制限しています。

車両での通行まで認められるか
前述のとおり、囲繞地通行権は、通行の場所のみならず、「通行の方法」についても、できるだけ囲繞地への損害が少ない方法を選ばなければなりません。
そうすると、自動車での通行は土地への損害が大きいため、認められないように思えます。
しかしながら、一切認められないということではなく、たとえば、囲繞地が成立した時点で、すでに自動車での通行が行われていたというような事情があった場合に、車両通行を認めたというケースもあります。また、そうでないとしても、「自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、自動車通行によって囲繞地所有者が受ける不利益等」の諸事情を総合的に考慮して、自動車による通行が認められるケースもあります。もっとも、認められるとしても、有償と判断されることもあります。

以上、囲繞地通行権について簡単に説明しました。
囲繞地・袋地の所有者同士が良好な関係にあれば、囲繞地通行権の存否、内容についてトラブルになることは少ないと思われます。
しかしながら、一度トラブルになると、解決が容易ではないケースも多々あります。
万が一トラブルに遭遇したとき、袋地所有者の立場として法律上どの程度の通行権が認められるのか、囲繞地所有者の立場として法律上どの程度の通行権は認めてあげなければならないのか等、話し合いの前提として知っておいても良い知識だと思います。
民法には相隣関係に関する条文が多くありますが、内容は平易なものですので(民法自体の成立が古いため、現代社会に合わないような内容もありますが)、万が一のときのため、一読しておいても良いかもしれません。

【コラム執筆者】
中本総合法律事務所
弁護士 宮崎慎吾