代物弁済とは②債権の担保と代物弁済の予約

掲載日 : 2015年6月9日

前回のコラムでは、代物弁済について、具体的な事例を挙げてご説明しました。その事例を繰り返すと、100万円を借り入れた債務者Aが、債権者Bの承諾を得て、本来行うべき100万円の返済に代わってルビーの指輪を渡すことを代物弁済と言います。

今回はその発展として、代物弁済が債権の担保として機能する場面をご説明します。

債権の担保とは
債権の担保とは、債権の一般的な効力だけでは債権者が満足しない場合に、その債権の実現をより確実にするための特別な効力をいいます。ここでは、債務者には債権を実現する経済的な能力がない場面を考えてみましょう。債務者Aに100万円を支払う能力がなく、債権者Bとしては債務者Aを相手にするだけでは満足できません。

このような債権の担保として、民法は抵当権や保証人といった様々な制度を準備していますが、残念ながら、これらの制度は必ずしも利用しやすいものとは限りません。

まず、抵当権は民法369条1項で、担保として債権者に差し入れる対象が「不動産」に限定されており、債務者が不動産を持たないとそもそも利用することができません。また、現実の問題として、金融機関が多くの不動産の第1順位の抵当権を設定していて、第2順位以降の抵当権には経済的な価値があまりありません。

次に、保証人は、家族や友人がお金を借り入れるときに「迷惑を掛けないから。」と言われて保証人になり、自分が保証人だという自覚がないケースが多く見られます。いざ債権者から請求を受けると、自分は保証人でないと裁判で争ったり、保証人に手持ちの財産がなかったりするので、保証人がいるとしても、経済的な価値があるとは限らないのです。

そこで、民法が直接に定めてはいないものの、債権の担保として機能する制度のひとつとして、「代物弁済の予約」が利用されるようになりました。

代物弁済の予約
「代物弁済の予約」の典型的なケースは次のとおりです。

①AがBから、1か月後に返すと約束をして、100万円を借り入れる際に②あらかじめ、Aが1か月経っても100万円を返さない場合には、Bの選択により、その支払いに代えてルビーの指輪を渡すことがある旨を約束しておきます(この2つめの約束を「代物弁済の予約」といいます。)。

もし、Aが1か月後に100万円を返さないのであれば、Bは100万円とルビーの指輪のどちらかが回収しやすいかや、そのときのルビーの相場などを考慮して、当初の約束どおり100万円の支払いを受けるのと、ルビーの指輪を受け取るのとではどちらが経済的に有利かを選択できるのです。

Bとしては、万が一、Aから100万円を返してもらえなくても、少なくともルビーの指輪を回収できるのですから、この「代物弁済の予約」は債権の担保として機能しているといえます。

「代物弁済」は、100万円の貸し借りの後に行われることが普通ですが、「代物弁済の予約」は、貸し借りと同じ時期に行われることが多く見られます。この点も、抵当権や保証人といった、民法の準備する制度と同様です。

残された問題
代物弁済の予約に残された問題としては、100万円よりもルビーの指輪の価値が極めて大きい場合に、清算をすべきかどうか、清算をするとしてどのように行うか、というものがあります。

ルビーの指輪の価値が300万円だった場合、BはAから本来の100万円に代わって、300万円相当のルビーの指輪を回収したことになりますが、「Bは利益を上げすぎではないか」「エビでタイを釣ったのではないか」という問題です。

この問題は極めてデリケートで、具体的なケースごとの検討が必要となってきます。

代物弁済やその予約のご相談は、弁護士などの法律の専門家までご相談ください。

【関連コラム】
代物弁済とは①要件と具体例

【コラム執筆者】
紅梅法律事務所
弁護士 舞弓和宏

事務所HP :
http://www.kou-bai.com/