個人事業主の法人化①メリット・デメリット

掲載日 : 2015年5月6日

今回は個人事業主が法人化する場合のメリットとデメリットについて解説いたします。
個人事業主は経営が軌道にのり、事業規模が徐々に拡大してきますと、誰しもが「法人化」を考えることになります。しかし、本当に法人化してしまっていいのだろうかという迷いが生じ、なかなか法人化に踏み切れない経営者が多数おられます。

「法人化」することによりいったいどんなメリットがあるのか、またデメリットは何かを整理したいと思います。法人化の形態には、合名会社、合資会社、株式会社、合同会社がありますが、今回は最も事例の多い株式会社を中心に説明いたします。

法人化のメリット

  • 対外的な信用度がアップする
    一般に、規模、人材、財政的基盤等の見地から会社組織の方が個人事業主よりも優れているという印象を持つため、会社の方が有利に事業を展開することができます。また、取引の相手方は、登記事項証明書を閲覧することにより、当該会社の商号、本店所在地、資本金、役員構成等を知ることができますので、個人事業主を相手にするより信用度が高まります。
  • 優秀な人材を確保しやすい
    就職する側からすると、会社形態にしているほうが、給与水準や社会保険、福利厚生等が充実しているイメージがあります。また、将来的にも個人事業主よりも事業規模拡大の機会が多いという印象を受けますので、人材が集まりやすいといえます。
  • 資金確保が多様化する
    株式会社の場合は、新株の発行や社債の発行により株主や投資家から資金を集めることができます。もちろん、新株の発行の場合には返済する必要がありません。また、会社形態をとることにより、信用度がアップし、金融機関からの借り入れも容易になる場合があります。これら資金調達の多様化は、設備投資や新規事業への投資により事業規模拡大のチャンスが広がることにもつながります。
  • 事業のリスクを低減できる
    個人事業主の場合は、事業の失敗を個人の財産で無限に責任を負うことになりますが、株式会社の場合には、あくまで出資額の範囲内で責任を負う有限責任が原則であり、事業リスクの分散を図ることができます。
  • 経営の合理化・効率化が進められる
    個人事業主は、とかく公私混同になりがちで、事業のための財産を私的に利用してしまう傾向にあります。法人化することにより、会社財産を個人財産と区分することができ、また法人収支が明確になるため、より経営の合理化、効率化を進めることが可能となります。さらに法人化は、事業を個人から分離する、すなわち所有と経営を分離することができますので、経営者に万が一のことが発生しても比較的スムーズに事業承継が行えます。
  • 税金負担を軽減できる措置が多様化する
    個人事業主の場合の所得税は、累進課税(儲けの額に比例して税率が上がる)のため、一定限度の所得を超えると法人税よりも高い税率が適用されます。その他に役員報酬が経費として計上できる、退職金や保険掛け金が損金として認められるなど、税金負担を軽減できる措置が多様化します。この点につきましては、次回、詳細に説明いたします。

法人化のデメリット

  • 設立費用がかかる
    設立に際しては、登録免許税(資本金の1000分の7(最低15万円))や定款、印鑑等の作成費用など、少なくとも25万円~30万円くらいの設立費用がかかります。
  • 決算が赤字であっても地方税の均等割りがかかる
    法人は法人住民税の均等割り(所得に関係なく一定額)がかかります。したがって、決算が赤字であっても納付しなければなりません。
  • 個人よりも事務手続が多くなる
    法人は個人事業主に比べると登記事項も多く、決算もより精密なものが求められますので、何かと事務手続の負担が多くなります。それにより、場合によっては専門家への支払報酬が増加することもあるでしょう。
  • 法人の資産を自由に利用できない
    法人の資産と個人の財産は明確に区分されるため、経営者は自由に法人の資産を利用することができなくなります。
  • 交際費が損金不算入となるケースがある
    個人事業主の場合には、交際費は全額必要経費として認められましたが、法人の場合には、上限が決められます。会社規模が大きくなると、交際費は経費として認められなくなり、全額損金不算入となります。

【関連コラム】
個人事業主の法人化②税務面での相違点
個人事業主の法人化③手続面について

【コラム執筆者】
田中豪経営会計事務所 / 船場中央税理士法人
公認会計士, 税理士 田中 豪