建物の一時使用目的の賃貸借契約とは?普通賃貸借との違い

掲載日 : 2015年2月17日

一時使用目的の賃貸借契約とは
あくまでも、一時使用目的のために建物を賃貸借する場合の契約をいいます。
たとえば、展示場や選挙事務所として建物を一時的に使用する場合、借主が建物の建て替え期間の仮住居として建物を一時的に使用する場合がこれに該当します。

一時使用目的の賃貸借契約は、借地借家法の規定が適用されるのではなく、一般法である民法の規定が適用されることになります。
※建物の一時使用目的の賃貸借については、借地借家法の適用がないことが定められていますが、民法にも明確な規定がありません。

すなわち、この制度は、基本的に、「住居という『賃借人にとっての生活の基盤』を保護する」ための借地借家法の適用場面とは場面設定が異なるといえます。借地借家法による強行規定の適用を受けないため、賃借人にとっては法による保護が少なく身分が不安定であるようにも見えますが、賃借人も一時使用の賃貸借で目的を果たすことができ、賃貸人にとっては契約期間終了後に建物が確実に返還されるため安心して建物を貸すことができると言えるでしょう。

普通賃貸借との違い
建物の普通賃貸借=更新が前提
借地借家法の適用を受けるため、賃借人としての身分が保護されていると言えます。
1)建物の明渡し
賃貸人による建物の賃貸借の解約の申入れ等は、正当な事由が無い場合、要求することができません(借地借家法第28条)。
2) 契約期間
普通賃貸借の場合、契約期間を1年未満と定めても、期間を定めない契約とみなされます(借地借家法第29条)。
また、期間の定めのある建物賃貸借の場合でも、賃貸人が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の解約の申入れをしなかったとき、賃貸人は正当な事由がある場合でも賃貸借契約は期間満了により終了しません(借地借家法第28条)。

一時使用目的の賃貸借契約
借地借家法の適用は無く、民法の賃貸借の規定が適用されることになります。
すなわち、一時使用目的の賃貸借として、契約期間の満了をもって契約は終了することになります。また、賃貸借の期間を定めなかった場合、当事者はいつでも解約の申入れをすることが可能ですし(民法第617条)、賃貸人に正当事由は必要ありません。

なお、一時使用目的の賃貸借契約は定期借家契約のように書面での契約が必須になっている訳でもありません。

契約期間の満了により、ただちに建物を明渡してもらえるので、賃貸人にとっては、不安の少ないメリットのある契約形態と言えるでしょう。

  普通賃貸借 一時使用目的の賃貸借契約
法律 借地借家法 民法
1年未満の
契約
期間の定めのない契約
(とみなされる)
契約どおりの期間
解約の申入れ 必要 不要
正当事由 必要 不要

一時使用目的の賃貸借契約の留意点
以上のように普通賃貸借か一時使用目的の賃貸借かによって扱いが異なります。
両者の区別は、契約期間が短期であるとか、契約書に「一時使用目的」と記載されていることのみで判断される訳ではありません。
賃貸借の目的や契約内容等から、その契約が存続させる趣旨のものであるか、短期に限定されているかを客観的に判断することになります。(最高裁・昭和36年10月10日判決)

【コラム執筆者】
フォーゲル綜合法律事務所 堺事務所
弁護士 藤田 さえ子