権利の濫用の判断基準と具体例

掲載日 : 2014年9月6日

権利の濫用とは、法律上の権利を、権利が認められる本来の目的を逸脱して行使することをいいます。権利の濫用に該当すると、その行為は許されない(禁止される)ことになります(民法1条3項)。

権利濫用の判断基準
権利の濫用にあたるか否かの判断基準について法律で明確に定められたものはなく、最終的には具体的な事案に応じて判断されることになりますが、この判断にあたって裁判所が考慮するのは、大きく分けると主観的要件と客観的要件の2つの要件であると言われています。

  • 主観的要件
    その権利行使が権利者になんの利益ももたらさないのに、ただ相手方を害する目的でなされたか否か
  • 客観的要件
    その権利行使が社会の倫理概念ないし公序良俗に反するか否か

なお、主観的要件は権利濫用の認定の一資料にすぎず、客観的要件こそが権利濫用の主たる考慮要素とするのが現在の法律の考え方とされています。

権利濫用の具体例
権利濫用の具体例には、以下のようなものがあります。
まず、有名な温泉の引湯管がたまたま自分の僅かな所有地を無権限で通過していたことから、その除去を求めた請求が認められなかった事例(宇奈月温泉事件・大審院昭和10年10月5日判決)や、借地期間満了を理由として、米軍に提供されている土地の返還を求めた請求が認められなかった事例(板付空港事件・最高裁昭和40年3月9日判決)のように、他人が自らの権利を侵害しているとしてこれを排除するよう主張すること自体が権利濫用に該当するとされたものがあります。
また、鉄道の敷設に適当な注意を払わなかったために、由緒ある松の老樹が蒸気機関車の煤煙で枯れてしまったケースで、鉄道敷設者に対し、松の樹の所有者に損害を賠償することが命ぜられた事例(信玄公旗掛松事件・大審院大正8年3月3日判決)のように、権利の濫用的行使が不法行為に該当し、他人に加えた損害を賠償しなければならないとされたものもあります。

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【コラム執筆者】
きっかわ法律事務所
弁護士 浜本 光浩