借主の家族に使用借権の相続が認められた事例(建物使用貸借)

掲載日 : 2014年8月12日

使用借権の相続
使用借権とは、目的物を無償で使用、収益できる権利です。
民法では「使用借権は、借主の死亡によって、その効力を失う。(599条)」と規定されており、原則として使用借権は相続の対象とならず、借主の死亡によって使用貸借関係は終了することになります。

借主の家族に使用借権の相続が認められた事例
上記の通り、原則として借主の死亡により使用貸借関係は終了します(民法599条)。
これは使用貸借関係が貸主と借主の人的関係に基礎を置くものであることに起因するものです。

ただし、以下の判決では、貸主と借主との間に人的関係などにより黙示的に建物使用貸借の合意が成立しているとした上、貸主と「借主の家族」との間にも、貸主と借主本人と同様の特別な人的関係があると判断されました。
すなわち、借主の死亡後により使用借関係を終了させるとした民法599条は適用されないとし、借主の死亡後もその家族に建物の居住を認めたものです。

貸主側でとっておくべき対策
このような事態を防ぐためには、借主の存命中に借主との間で使用貸借契約を締結し、この契約の中で、「民法599条の規定に従い、本契約は借主の死亡によってその効力を失う。」旨を定めるべきと考えられます。

東京高裁平成13年4月18日判決 
概 要 Bの夫に認知され、B夫婦の子供として育てられてきたAは、一時を除きB夫婦と同居していた。
Aは結婚し、配偶者及びその子もBと同居をはじめ、A一家は約23年間Bと同居し、Bの面倒を見てきた(Bの夫は死亡)。
Bはその後、実子と同居することとなり、家を出たが、A一家に建物明け渡しを求めることもなかった。また、AからBに家賃が支払われることもなかった。
A及びBの死亡後、Bの実子がAの配偶者と子供に建物明け渡しを求めた。
争 点 BとAとの間で使用貸借関係は成立しているか。また、使用貸借関係が成立しているとした場合に、借主Aの死亡により、Aの配偶者と子は使用借権を相続するか。
判決要旨  【使用貸借の合意】
借主AがB夫婦の実子同然に育てられてきたこと、A一家は20数年にわたりBと同居し、Bの面倒を見てきたこと、Bが家を出て同居が終わった後も、BがAら一家に建物の明け渡しを求めたことがないことなどに鑑みれば、Bが家を出たころにBとAとの間で黙示的に建物の使用貸借の合意が成立したものと解することができる。
【借主としてのAの権利を承継できるか】
民法599条は借主の死亡を使用貸借の終了原因としている。これは使用貸借関係が貸主と借主の特別な人的関係に基礎を置くものであることに由来する。
しかし、本件のようにBとAとの間に実親子同然の関係があり、BがAの家族と長年同居してきたような場合、BとAの家族との間には、BとA本人との間と同様な特別な人的関係があるというべきであるから、このような場合に民法599条は適用されないと解するのが相当である。

【コラム執筆者】
きっかわ法律事務所
弁護士 浜本 光浩