遺産である建物に無償で住み続けることができるか(建物使用貸借)

掲載日 : 2014年7月22日

親が所有する家に子供などの親族が無償で同居している、ということはよくある話です。
無償ということは使用貸借にあたるわけですが、親族関係にある場合においては、書面により使用貸借契約を締結しているケースは現実的にはほとんど見られないと思われます。

その後、親が死亡し、相続が発生した場合、同居していた子は遺産である建物に無償で住み続けることができるか否かが問題となります。

相続人が同居の子一人の場合
建物を単独で相続し、所有者として問題なく居住を継続することができます。

同居の子以外にも相続人が存在する場合
遺産である建物は他の相続人と共有状態にあります。
そして、この場合には、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間で、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間、引き続き同居人に建物を無償で使用させる旨の合意があったものと推認され、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約があることとなります。このため、同居の相続人は、遺産分割が終わるまでは建物に無償で居住することが可能となります。
建物所有者が死亡した場合、建物で所有者と暮らしていた者は無償での居住を継続できるか

なお、遺産分割により不動産の所有関係が最終的に確定するまでの間、同居の相続人は建物に無償で居住することが可能とされていることから、他の相続人が同居の相続人に対し、建物を単独使用する利益を不当利得であるとして返還を求めても認められないこととなります。
共有物を単独使用する共有者に対する金銭賠償が否定された事例

また、子が親の所有する家に無償で同居していた場合に、建物に無償で居住する利益が特別受益にあたるかについては、子の占有が独立の占有と認められないことが多いことから、多くのケースでは特別受益にはあたらないものと思われます。
特別受益|生計の資本としての贈与②不動産(建物無償使用)

遺産分割終了後
遺産分割が終わると、使用貸借契約も終了します。
使用借権については、「契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない(民法597条1項)」という規定があるため、同居の相続人は、当該建物を相続しない限り、遺産分割終了後は継続して無償で居住することはできません。

【コラム執筆者】
きっかわ法律事務所
弁護士 浜本 光浩