使用貸借における相続(貸主・借主の死亡)

掲載日 : 2014年7月3日

使用借権とは、目的物を無償で使用、収益できる権利です。
使用貸借契約の成立により、借主は契約または目的物の用法に従って無償で使用収益を行い、貸主は目的物を使用収益させるという債務を一方的に負うことになります(民法593条)。
このように、使用貸借契約は無償という恩恵的な性格を有するため、その多くは親族間や特別な人間関係がある者の間で成立するといえる契約形態です。

では、貸主または借主が死亡した場合において、使用貸借関係は相続されるのでしょうか。

貸主の死亡
借主に目的物を使用収益させる、という貸主の債務が相続人に承継されるため、借主には影響がありません。

借主の死亡
1)原則:相続の対象とならない
民法では「使用借権は、借主の死亡によって、その効力を失う。(599条)」と規定されています。
使用借権は、貸主と借主との間の人間関係や信頼関係に基づく権利であり、借主にのみ貸与され、その相続人に承継されることまでを予定していない一身専属権としての性格を有しています。
このため、原則として使用借権は相続の対象とならず、借主の死亡によって使用貸借関係は終了することになります。

2) 例外:相続の対象となる場合がある
ただし、民法599条の規定は任意規定と解されており、別段の定めをすることが可能ですので、別段の定めがあれば相続の対象となります。また、別段の定めがないときであっても、使用貸借の対象物や使用目的を前提とする当事者間の通常の意思解釈から、借主の死亡により当然に使用貸借関係が終了するとはいえない場合には、相続の対象となるとの裁判例もあります。
なお、貸主が、借主が死亡した後も引き続き借主の相続人が使用していることを知りながら特に異議を述べなかった場合には、黙示の承諾があったものとして使用貸借関係が継続する余地があります。

  • 別段の定めがある場合
    使用貸借契約において、使用借権者(借主)が死亡した場合、その相続人が相続する旨の特約があれば、相続することができます。
  • 当事者間の通常の意思解釈による場合
    使用貸借契約は、口頭によりなされ、当初の契約内容が不明確なことも多いことから、別段の定めがないケースが相当数に上るものと思われます。
    このようなケースであっても、不動産の使用借権、特に建物所有を目的とする土地の使用借権については、建物の使用収益の必要のある限り土地の使用収益の必要があるのが一般的であり、通常の意思解釈として、借主が死亡しても使用収益の必要性が失われる訳ではないことから、使用借権の相続が認められると解する説があり、この説に沿う裁判例も見られます。

    東京地判昭56.3.12
    建物所有を目的とする土地の使用貸借においては、当該土地の使用収益の必要は一般に当該地上建物の使用収益の必要のある限り存続するものであり、通常の意思解釈としても借主本人の死亡により当然にその必要性が失われ契約の目的を遂げ終わるというものではないから、本件のような建物所有を目的とする土地の使用貸借につき、任意規定・補充規定である民法599条が当然に適用されるものではない。そして、・・・被告らは相続により本件建物を共有するに至ったものであるから、これと同時に本件土地の使用借権をも相続したものと認められ・・・
  • 黙示の承諾
    貸主が、借主が死亡した後も引き続き借主の相続人が使用していることを知りながら特に異議を述べなかった場合は、現状を黙認しているものと解することができることから、黙示の承諾があったものとして、使用貸借関係が継続する余地があります。

【コラム執筆者】
きっかわ法律事務所
弁護士 浜本 光浩