家賃の供託(弁済供託とは)

掲載日 : 2014年5月26日

家賃の供託
家主から家賃を値上げしたいと言われたけれども,値上げには納得できないため,従前の家賃を家主に支払おうとしたところ,家主が家賃を受け取ってくれないとき,借主としては,どのように対処すればよいでしょうか?

賃貸借契約において,借主は振込みにより家賃を支払うという約定になっていれば,借主としては,従前の家賃を振り込む方法により支払うこともできます。
しかし,借主が家主方へ家賃を持参して支払うという約定になっていれば,家主が家賃を受け取ってくれない以上,借主としては,家賃を供託所(法務局)に「供託」するという方法を検討することになります。

供託の意義
供託とは,金銭,有価証券等を供託所に提出して,その管理を委ね,最終的には供託所を通じて,金銭,有価証券等をある人に受領させることにより,一定の法律上の目的を達成するために設けられている手続です。

法令上,供託をすることが許されている場合又は義務付けられている場合に限り,供託を利用することができます。

弁済供託
供託には5つの種類がありますが,そのうち,家賃の供託は,弁済供託(弁済のための供託)の性質を有しています。
そして,家賃の弁済供託が認められるのは,次のような場合です。

  • 支払期日に家主方へ家賃を持参したが,家賃の値上げや建物の明渡要求等を理由に,受領を拒否された場合(受領拒絶
  • 家主との間で既に争いになっていて,あらかじめ家賃の受領を拒否され,家主方へ家賃を持参しても受け取ってもらえないことが明らかな場合(受領拒絶
  • 家主が行方不明の場合(受領不能
  • 家主と称する複数の者から家賃の支払を請求され,誰に支払ってよいかを判断できない場合,又は家主が死亡し,その相続人が誰であるかが不明の場合(債権者不確知

なお,家主から家賃の増額を請求された場合において,家主との間で協議がまとまらないときは,借主は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の家賃を支払うことをもって足ります(借地借家法32条2項本文)。このような場合に,借主としては,供託を利用することが考えられます。
ただし,増額を正当とする裁判が確定した場合において,借主が既に支払った額に不足があるときは,その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付して支払わなければなりません(同条項ただし書)。

家賃の供託手続
法務省のホームページでも,供託地,供託書の記載方法等,供託の具体的な手続が説明されていますが,詳細については,弁護士や司法書士,又は最寄りの供託所(法務局)にお問い合わせされることをお勧めします。

【コラム執筆者】
えにし法律事務所
弁護士 矢倉 良浩