事業承継と遺留分に関する民法の特例②合意と手続きの留意点

掲載日 : 2014年4月10日

自社株式などの承継に関する遺留分制度の限界を補うため、平成20年5月に成立した経営承継円滑化法に基づき、遺留分に関する民法の特例ができました。

この特例は、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることにより、以下の効果を得られることができます。

  • 生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)
  • 生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産に算入する際の評価額を予め固定(固定合意)

.合意における留意点
合意には除外合意と固定合意がありますが、当該合意をする際は、後継者が当該株式等を処分した場合や代表者として経営に従事しなくなった場合の措置も、併せて書面で定めなければなりません(法4条3項)。
そのような場合は、特例が前提としていた「経営の承継の円滑化」を図る必要がなくなるからです。

ちなみに、以上の合意をする際に、株式等以外の財産についても同様の合意をすることが出来ます(法5条)。
中小企業では、代表者個人の財産と会社の経営が分離されていない場合が多く、その工場が個人所有の敷地の上に建っていたり、その金繰りを個人からの貸付(代表者貸付)によって賄っていたりしています。そのような場合、当該個人資産も対象に据えなければ「経営の承継の円滑化」は図れないことから、このような定めが置かれている訳です。

.大臣の確認と裁判所の許可
その上で、後継者は、当該合意が成立した日から1月以内に経済産業大臣の確認を受けるための申請をし、その確認を受けた日から1月以内に家庭裁判所の許可を受けるための申立をする必要があります(法7条、8条)。

家庭裁判所としては、当該合意が「当事者全員の真意に出たものであるとの心証」を得た場合に、これを許可することになります(法8条2項)。

遺留分の事前放棄制度の補完
これと同様の結果は遺留分の放棄という制度(1043条)でも導けます。
ただし、その遺留分放棄の許可の申立自体が遺留分放棄をする推定相続人に委ねられていて、また、家庭裁判所が許可をする時点で遺留分放棄の意思があるかが確認されるのでその段階で翻意される可能性もありました(確実な申立が期待できない)。

そこで、より利用し易くするため、申立自体は後継者ができるようになりました。
家庭裁判所が心証を抱くのも、文言からすれば「合意が当事者全員の真意に出たものである」か否かという点が中心になるので、翻意の可能性も狭まるのではないかという意見もあります(鳥飼「経営承継円滑化法と民法特例の法実務」清文社116頁以下)。

なお、司法統計年報(家事編)によれば、その申立てと(認容)許可の数は、以下の通りであり、まだまだ申立数等は少ないようですが、その外にも、金融支援や相続税の課税措置も定められていますので、子への事業承継を考えているなら検討してみるのも悪くないかもしれません。

  申立数 (認容)許可の数
平成21年度 7件 5件
平成22年度 19件 20件
平成23年度 19件 15件
平成24年度 9件 13件

【関連コラム】
事業承継と遺留分に関する民法の特例①従来の問題と適用要件
事業承継と遺留分に関する民法の特例③適用の効果と具体例

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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