遺言執行者⑥特定の不動産が遺贈された場合における登記手続

掲載日 : 2014年3月27日

遺言執行とは具体的にどのようなことをするのでしょうか。
特定の不動産が遺贈(遺言によって無償で譲渡される場合、964条)を例として、説明します。

不動産の遺贈に関する移転登記
不動産の遺贈に関する移転登記は、受遺者と遺言執行者の共同申請で行います(不動産登記法60条)。

特定遺贈の対象たる不動産の所有者が死亡した場合、その権利義務を承継するのはその相続人(896条本文)です。
このため、遺言執行者がいない場合は相続人と受遺者が共同で登記申請を行います。

一方、遺言執行者がいる場合、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」とされていて(1015条)、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」ともされている(1013条)ので、遺言執行者が相続人に代わって移転登記の申請をする訳です。

1015条の「代理人」と職務説
1015条の「代理人」とはどういう意味なのかについては、争いがあります。
被相続人の代理人と考えるのがイメージしやすいですが、遺言執行者が職務を行うとき既に被相続人はこの世に存在しません。
かといって、1013条が「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」としていることからも読み取れるように、遺言執行者が相続人と利害対立する場面も予定されていて、その代理人であるという考え方にも難色があります。

【職務説(通説)】
そこで、遺言執行者は相続人から離れて独自の職務を行うものとして、1015条の意味は「遺言執行者の行為の効果が相続人に帰属することを明らかにした」ものとされています(中川外編(泉担当「新版注釈民法(28)〔補訂版〕」有斐閣361頁)。
これは職務説という見解で、通説とされています。ですから、遺言執行者に関する訴状、判決の表示も「亡甲野一郎遺言執行者被告乙野二郎」とされていて、そこでは「何某代理人」というような、代理の場合に要求される「顕名(本人のためにすることを示すもの、99条1項)」表示はされていません。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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