遺言執行者⑤借地権の付着した建物の遺贈

掲載日 : 2014年3月26日

特定の不動産が遺贈(遺言によって無償で譲渡される場合、964条)され、その不動産が借地上の建物である場合、注意が必要です。
建物所有権を譲渡することは、特段の事情のない限り、借地権も譲渡したことになります。
(最3小判昭和47年7月18日金融法務事情662号21頁以下)。

借地権の譲渡の問題と対策
この場合、借地権の譲渡にあたっては、賃貸人(地主)の承諾を得る必要があるとされているため、賃貸人の承諾を得ない限り、賃貸借契約が解除されてしまいます(612条)。
ですから、遺言執行者としては賃貸人の承諾を得る必要があります。

相続させる旨の遺言の活用
このような手間を考えるなら、仮に受遺者が相続人であるとすれば、遺贈という形式ではなく「相続させる」旨の遺言の形式で当該不動産を譲ることが効果的です。
※903条(特別受益者の相続分)は相続人が遺贈を受けられることを前提とした規定であり、相続人も遺贈を受けることは出来ます。

この場合、香川判決は「相続させる」旨の遺言をした場合、原則として、遺産分割協議等の行為をすることなく、被相続人の死亡の時(遺言の効力が生じた時)に直ちに遺産が相続により承継されると判断しています。
※香川判決については、子供のいない夫婦の遺言②具体的な遺言の方法(不動産) を参照ください。

このため、612条が定めるところの「譲渡」があったとはされないため、借地権の譲渡について賃貸人の承諾を得る必要はありません。

参考:農地の場合
遺贈の対象たる不動産が農地である場合も似たような問題が生じます。
農地法3条は、農地等について所有権を移転等する場合には「農業委員会等の許可」を受けなければならないとしているからです。
この場合にも、遺産が農地の場合、「相続させる」旨の遺言をすることにより、農業委員会等の許可が不要となります。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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