遺言執行者③特定の不動産の遺贈と登記の必要性

掲載日 : 2014年3月24日

遺言執行とは具体的にどのようなことをするのでしょうか。
特定の不動産が遺贈(遺言によって無償で譲渡される場合、964条)を例として、説明します。

不動産の遺贈の執行は、受遺者(遺言により遺贈を受けることとなっていた者)に登記名義を移転する形で行います。

特定遺贈の対象たる不動産の所有者が死亡した場合、その所有権は受遺者に移転します。
しかし、受遺者としては、登記を備えない限り、当該不動産を売買したりできず、事実上処分等できないのですから、「登記の重要性」に変わりありません。

しかも、最3小判昭和46年11月16日判タ279号201頁以下(以下、昭和46年判決)は、遺贈があった場合の権利関係についても登記が必要であり、遺言執行者が受贈者に登記名義を移転する必要があると判断をしています。

最3小判昭和46年11月16日判決
最3小判昭和46年11月16日判タ279号201頁以下は、遺贈があった場合の権利関係を対抗問題としています。

昭和46年判決の事案の概略
被相続人が不動産を有しており、その子として甲、乙がいました。被相続人は、不動産を、生前、甲に贈与したのですが、登記未了の間に乙に特定遺贈をし、その後に相続が開始しました。

この場合、昭和46年判決は、「贈与および遺贈による物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもつて決すると解するのが相当」としました。

つまり、受遺者である乙としても不動産の登記名義を取得しない限り、甲に対抗できるような完全な所有権を取得できないので、そのような点も含めると、遺言執行者としては、尚更、受遺者に登記名義を移転しなければならない必要性があるということです。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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