相続の現実問題

掲載日 : 2014年3月19日

~財産が少なくても「争続」のおそれ~

現在の民法では相続人が各々の立場で権利を主張することができます。
また、最近の経済事情などにより、相続財産を「あて」にしている人たちが増えてきており、遺産分割の話し合いはさらに複雑化しつつあります。
確かに相続税を納める人たちは少ないのですが、相続財産の中に不動産があるケースにおいては、遺産分割の対策を立てておく必要性があると言えます。

遺産に占める不動産の割合
1)相続税の対象となる割合
死亡者数に対して、相続税のかかる財産を残す人、すなわち課税対象となる被相続人の数の割合はここ数年4%程度で推移しています。
つまり、25人に1人の割合であるため、実際に相続税がかかる人は少ないといえます。

遺産に占める不動産の割合

ただし、相続税の見直しが行われ、これに伴って実際に相続税がかかる人が増加することが見込まれています。

2)相続財産のうち、不動産の占める割合は大きい
ただし、相続税がかからないからと言っても相続とは無縁ではありません。
以下の通り、相続財産のうち50%以上を不動産(土地と家屋など)が占めていますが、これら不動産は現預金などとは異なり、分割が困難であるという特性があります。

確かに納税問題については心配のない場合が大半だと考えられますが、遺産の多くが不動産または遺産が不動産のみで相続人が複数いるケースにおいては、遺産分割対策を考えておく必要があると言えるでしょう。

遺産に占める不動産の割合

近年は雇用情勢も悪く、年金制度への不安から、遺産を継ぐ立場の約70%が相続財産に期待を寄せているようです。相続財産で一番欲しいものは、1位が「預貯金」で、2位に不動産が挙げられています(平成24年8月8日付日本経済新聞)。

家族のあり方
1)家督相続の消失と権利の主張
戦前の相続は家督相続制度で、多くの場合は長男が家長となり、家の財産は家長が相続して家と財産を守る相続が行われてきました。
ところが、戦後民法が施行され、家督相続制度が廃止され、相続人が各々権利を持つようになりました。これにより、長男のみならず、次男や長女も一人ひとりの権利が守られるようになりました。

従来は長男が相続するとされてきたため、他の子供たちはそれに異議を申し立てることなく、相続が行われてきましたが、最近では長男以外の子も平等の権利を主張することがむしろ当然となっているようです。

また、以前であれば家は家長が守るという意識から、長男が親と同居する場合が多く見られましたが、最近は親と同居するのは必ずしも長男とは限りません。また誰とも同居せず、親のみで暮らしている場合もあります。
親と同居して家を守る長男(家長)というパターンが崩れ、発言力は兄弟が平等に有する場合においては相続の話し合いでもリーダーシップを取る存在がないため、収拾がつかないこともあります。

2)離婚・再婚で権利の複雑化
最近では、離婚や再婚が増えていることもあり、家族の人間関係が複雑化しています。
相続人は基本的に身内ですが、先妻の子、認知した子、養子などがおり、各々の思惑があるケースや会ったこともない相続人がいるケースなどにおいては遺産分割の話し合いが進まない場合もあります。

【コラム執筆者】
佐々木・魚谷法律事務所
弁護士 魚谷 和世