相続放棄に関する総合問題

掲載日 : 2014年3月11日

被相続人の相続人として子A、Bがいましたが、Aに全ての遺産を相続させるべく、そのような遺産分割協議書をAB間で交わしたところ、熟慮期間経過後、被相続人の債権者から多額の債務の弁済を請求されました。

問題点
この場合、Bの相続放棄が許されるかについては、以下全ての点が問題になります。

  • 遺産分割協議の錯誤無効の主張は認められるのか
  • Aとの遺産分割協議は相続財産の「処分」にあたり(921条1号)法定単純承認になるのではないか
  • 相続放棄の熟慮期間は経過しているのではないか、その起算時は何時か

これと類似した事案について、大阪高裁は、①について錯誤無効の余地を認め、②について法定単純承認にならない余地も認めました。

大阪高決平成10年2月9日判タ985号257頁以下
多額の相続債務の存在を認識しておれば、当初から相続放棄の手続を採っていたものと考えられ…相続放棄の手続を採らなかったのは、相続債務の不存在を誤信していたためであり、前記のとおり被相続人と抗告人らの生活状況…他の共同相続人との協議内容の如何によっては、本件遺産分割協議が要素の錯誤により無効となり、ひいては法定単純承認の効果も発生しないと見る余地がある

ただし、たとえ遺産分割協議が無効であり、遺産分割協議による「処分」としての法定単純承認の効果が生じないとされたとしても、相続放棄の申述をした時には被相続人の死亡から3か月(熟慮期間)が経過していました。
そこで、相続債務が存在しないと信じるにつき相当な理由がある場合には、③は債権者からの請求を受けた時(相続債務のほぼ全容を認識した時)から熟慮期間を起算すべきであるとして、この点も踏まえて判断するよう原審に差し戻したというものです。

意外と生じやすい問題と思いますので、知っていると参考になります。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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