相続放棄の撤回・錯誤無効

掲載日 : 2014年3月10日

相続放棄の撤回
相続放棄の撤回はできません(民法919条)。
同条は1項で、「相続の承認及び放棄は」熟慮期間中とはいえ、「撤回することはできない」としています。

ただ、未成年者、成年被後見人取消し、詐欺や脅迫による場合といったは相続放棄の取消しが認められています(同条2項)。
これは、同条は2項が、「第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消をすることを妨げない」と規定していることに基づきます。

このように、相続放棄の撤回はできませんが、「取消し」をすることはできます。

錯誤無効の主張は認められるか
では、民法第一編(総則)の錯誤「無効」の主張は認められるでしょうか。
民法は、錯誤(勘違い)状態に陥って為された意思表示が無効であると定めています(95条)。

明文はないのですが、最高裁は以下の通り判断し、錯誤による無効の主張も認めています。
「相続放棄は家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産上の法律行為であるから、これにつき民法95条の規定の適用があるのは当然」としています(最1小判昭和40年5月27日判タ179号121頁以下)

錯誤無効には意思表示の錯誤が必要
95条は「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」としています。
錯誤無効を主張するためには以下に留意する必要があります。

  • 原則として、相続放棄という「意思表示」に錯誤(勘違い)がなければ無効主張は許されない。
  • 「要素に錯誤があった」とき。すなわち、相続放棄(意思表示)をした者が、その事実を知っていたならば、そのような行為(相続放棄)を(その者だけでなく)通常人もしなかったはずである、と認められる場合でなければならない。
  • 重大な過失がある場合には認められない。
父が死亡しその相続人が母と兄妹2人の場合。
兄に父の遺産を「贈与」する意思で(贈与書だと思って)、母妹が相続放棄に関する書類を作成提出した。

この場合、相続放棄をするという意思はないので、錯誤無効を基礎づける勘違い(錯誤)はあることになります(上記①)。
しかし、贈与であれ放棄であれ、兄に遺産が帰属するという点で、最終的な効果としては同じですから、それが「要素」の錯誤といえるか問題になるでしょう(上記②)。
また、相続放棄に関する書類にはそのための書類であることが明確に書かれていますので「重大な過失」が認められることも多いと思われます(上記③)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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