相続放棄と不動産登記②遺産分割協議の場合との比較

掲載日 : 2014年3月9日

相続放棄の効果は絶対的で、何人に対しても、登記等なくして効力を生ずる、とされています。

これに対し、遺産分割協議により法定相続分を超えて権利を取得した後、登記をしないまま第三者が現れた場合、遺産分割により法定相続分を超えて取得した権利を第三者に対抗することはできません。

こうした判断を行った最高裁判例があるので、若干事案を簡略化し、ご紹介しておきます。

最3小判昭和46年1月26日

事案の概要
Aが不動産を残して死亡しました。その相続人はB、Cの2人でしたが、Bには債権者Dがいました。
遺産分割調停の結果、Cが不動産を相続することになりましたが、不動産の登記を行わないでいたところ、債権者Dが不動産についてのBの持分に仮差押え登記をしました。
相続放棄と不動産登記と債権者の関係図

遺産分割調停によってAの不動産のBの持分がCのものになった場合には、最高裁は自己の持分以上の権利を第三者に主張するためには登記が必要である、と判断しています。
このため、Cより先にDが仮差押えをし、その旨の登記を経たので、Bの持分については、Cは負けることになります。

最3小判昭和46年1月26日判タ259号153頁以下
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずるものではあるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいつたん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である

判例の合理性
相続放棄と不動産登記については、①最2小判昭和42年1月20日、②最3小判昭和46年1月26日の2つの判例を検討しました。

これら2つの判例については、その整合性が検討されていますが、遺産分割に関する909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」としています。
一方、相続放棄の場合、遡及効を認めているものの遺産分割協議の場合のような「ただし書-第三者保護規定」がありません。

その意味で、相続放棄についてはDのような第三者保護の必要性は弱まります。
その上で、相続放棄は熟慮期間中にしかできず(915条1項本文)また、家庭裁判所に申述という形でなされる(938条)ので、第三者としてもこれを確かめることもできます。

そこで、遡及効を絶対的に貫いてもそれほど害される第三者は多くは登場しないという点で、2つの判例の違いには合理性があるとされています。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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