相続放棄と不動産登記①債権者等への対抗

掲載日 : 2014年3月8日

不動産について、所有権の移転などがあった場合には、その登記をしないと第三者には対抗することができません(177条)。

この点、相続放棄をした相続人が、相続登記を行って当該不動産の名義人になったり、これを第三者名義に移転したりすることはないのが通常です。
しかし、不心得者が、相続放棄をしたにもかかわらず、その事実を隠して自己名義の相続登記を得る場合等もあるでしょう。また、相続放棄をした者の債権者が、相続放棄の事実を知らないまま、その相続人に代わって、不動産の相続登記を行い、その不動産を差押えることはわりとみかけます。

相続放棄が行われた場合、その者が相続する筈だった財産は他の者が相続することになります。
例えば、子が死亡し孫が相続放棄した場合、その子の財産はその父母に帰属します。にもかかわらず、その父母としては、自己名義への登記をしない限り、孫の債権者等から逃れることができないのか、が問題となります。

このような場合、相続放棄の効果は絶対的で、何人に対しても、登記等なくして効力を生ずる、とされています。
すなわち、相続放棄をした孫は、最初から相続人とならなかったものとみなされ、子の財産を相続した父母は、子の財産の差押え等をした孫の債権者に対し、差押の無効を主張することができます。

こうした判断を行った最高裁判例があるので、事案を簡略化した上で、ご紹介しておきます。

最2小判昭和42年1月20日

事案の概要
Aが不動産を残して死亡しました。その相続人はB、Cの2人でした。ところが、Bには債権者Dがいて、Dは、Bが相続放棄をした後.、不動産についてのBの相続持分に仮差押え登記をしました。
相続放棄と不動産登記と債権者の関係図

Bの相続放棄は既にされているのですから、CとしてはAの不動産を単独名義に変更することは可能でした。
にもかかわらず、Cは、そのような登記をしていなかった点を捉えて、Bが相続するはずだった(が放棄の結果Cのものになった)Aの不動産の持分をDに登記なくして対抗できない(177条)という主張です。

この点について、最高裁は以下のように判断しました。
所定期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述をした場合、相続人は相続開始時にさかのぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなります。
この相続放棄の効力は絶対的なものであり、登記がなくても、何人に対しても効力を生じます。
そこで、相続放棄をした相続人の債権者がした相続財産の仮差押登記が無効とされました。

この判例を前提とするなら、CはBが相続する筈だったAの不動産の持分を登記なくしてDに対抗できるということになります。

最2小判昭和42年1月20日判タ204号109頁以下
放棄をなすべき期間…内に家庭裁判所に放棄の申述をすると…相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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