再転相続に関する考察

掲載日 : 2014年3月7日

再転相続人(丙)は、被相続人(甲)の相続を承認した上で相続人(乙)の相続を放棄し、被相続人(甲)の遺産のみを相続することはできるのか、という問題について考察してみたいと思います。
昭和63年判決が直接触れていない点です。

再転相続の相続関係図

被相続人の相続の承認は「処分」にあたるか
丙が甲の相続を承認した場合、これが921条1号の「処分」にあたらないかです。
昭和63年判決は「甲の相続につき放棄をしても…乙の相続につき承認または放棄をするのになんら障害にならず」としているだけですが、承認の場合も同様に「処分」と考えるべきでしょう。

例えば、遺産を自らのものとして「取得」しても「破棄」しても「処分」があったことに変わりはありません。
ところが、昭和63年判決は「甲の相続放棄」は「処分」にあたらないことを判断の基礎としている訳ですから、それは「甲の相続承認」があった場合も同様と考えられるからです(千藤「再転相続人の相続放棄」別冊ジュリスト193号家族法判例百選[第7版]160頁以下によれば、通説とされているようです。)。

相続人の相続放棄をしても被相続人の相続承認が可能か
問題は、その後乙の相続を放棄したにもかかわらず、甲の遺産を相続することができるかです。
これに対する解答としては、「相続できない」というのが通説です。「相続」の本質は「承継」と解されていますから、乙を承継していない以上、乙を通じた甲の「承継」ということも考えられないからです。

この点、甲の相続を認める有力説が存在します。
確かに、昭和63年判決は「丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはない」としています。
また、それに関する金融法務事情1206号30頁以下のコメントによれば、「遡及的無効という構成を採らなかったのは、放棄の撤回ができないとする民法919条1項の規定の趣旨と同様に、身分関係の安定を重視したもの」とされています。

だとすれば、同じく身分関係に関することですから、承認に関する効力も無効にならないと解することができると、この有力説は主張します。
その上で、再転相続に関する916条が、相続や移転といった文言を用いていない(ドイツでは前者の文言が、イタリアでは後者の文言が使用されているようです。)として、日本法における再転相続は丙固有の権利であって、そのまま甲の遺産は丙に「帰属」すると考える訳です(山本「再転相続について」現代法学の諸相法律文化社93頁以下、特に106頁以下)。

とても興味深い見解ですが、この見解は乙を通さず、甲から丙への権利帰属をそのまま認めます。それも「承継」だといわれるとそれまでなのですが、相続における「承継」とは祖父から子、子から孫へと脈々と続いていくものと解されており、そのような理解に明らかに反します。
そのような意味において、前述したとおり、丙には乙を通じた甲の「承継」は認められないのではないかと思います。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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