再転相続における相続放棄の順序②昭和63年6月21日判決

掲載日 : 2014年3月6日

再転相続人は、2つの相続について承認・放棄する権利を有します。
ただし、最高裁は相続放棄の順序により、以下のとおり述べ、結果が異なる場合があることを認めました(最3小判昭和63年6月21日)。
以下、判例をご紹介します。

最3小判昭和63年6月21日(以下、昭和63年判決)

事案の概要
親Aが不動産を残して死亡しました。その子はB、Cの2人でしたが、Bには債権者Dがいて、不動産についてのBの相続持分2分の1に仮差押え登記をしました。
その後、BはAの相続を承認又は放棄することなく死亡し、Bの子Eが相続人だったのですが、Eは、再転相続人として、先にAの相続を放棄した上で、Bの相続も放棄しました。
そこで、CはDの仮差押えとその登記は無効であると主張したという事案です。
昭和63年6月21日判決の関係図

【債権者Dの主張】
939条の解釈として、EのしたAの相続放棄が(事後的にとはいえ)無効になるのであれば、Aの不動産についてのBの相続持分2分の1を有効に差押えられる。

この点について、昭和63年判決は、以下のとおり判断し、結果としてCの主張が認められました。

すなわち、EがAの相続を放棄することにより、BはAの相続人でなかったことになり、債権者の差押は無効となります。相続人はCのみとなり、Aの相続財産は全てCが相続することになりました。Cは登記の抹消を求めることも可能となりました(第三者異議の訴え)。

その後、EはBの相続を放棄することにより、Bの相続人でなかったことになるため、Bの借金を相続しません。CはBの二次相続人ですが、CもBの相続を放棄すればBの借金を相続する者はいなくなることになります。

昭和63年判決
民法916条の規定は、甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合には、乙の法定相続人である丙のために、甲の相続についての熟慮期間を乙の相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、甲の相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるのではなく、右のような丙の再転相続人たる地位そのものに基づき、甲の相続と乙の相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、各別に熟慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保障する趣旨をも有するものと解すべきである。そうであつてみれば、丙が乙の相続を放棄して、もはや乙の権利義務をなんら承継しなくなつた場合には、丙は、右の放棄によつて乙が有していた甲の相続についての承認または放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはや甲の相続につき承認または放棄をすることはできないといわざるをえないが、丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かつ、甲の相続につき放棄をしても、それによつては乙の相続につき承認または放棄をするのになんら障害にならず、また、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である

【参考:Eが相続人(B)の放棄を先にした場合】
Bの相続放棄をすれば、Dからの借金を回避することができます。
ただし、昭和63年判決の判断に従えば、Bの権利義務を承継しなくなるため、EはBの有するAに関する承認・放棄を選択する権利を失うことになります。
すると、Aの相続財産のうちBの持分についてはこれを守ることができなくなります。

このように、相続の放棄にあたっては、その順序が重要になるため、専門家にご相談される方が良いと思われます。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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