相続回復請求権と共同相続人②主観的事情

掲載日 : 2014年2月21日

相続回復請求権は、侵害を知った時から5年間行使しない場合は時効にかかります。または相続開始の時から20年を経過したときも、同様とされています(884条)。

共同相続人についても「相続権の侵害」ということは考えられます(この点については「共同相続人に対する相続回復請求権の行使①相続権の侵害はあるのか」を参照ください。)。

884条の趣旨
しかし、だからといって「相続権の侵害」をしている共同相続人に、常に884条の消滅時効の援用を認めるのは相当ではありません。本来時効消滅しない権利を短期で時効消滅させるには、早期に相続紛争を解決しようとした884条の趣旨に適う場合でなければなりません。

相続回復請求権の消滅時効を援用できる場合
共同相続人に対しても884条が適用されますが、昭和53年判決(最大判昭和53年12月20日)は、以下の2つの場合の者だけが、相続回復請求権の消滅時効を援用できると判断し、実務的にもこれに沿った運用がされています。

  • 侵害者が他の相続人の相続権を侵害していることを知らない場合
  • 他の相続人の相続権を侵害していないと信じる合理的な事由(※)がある場合(これが無過失と表現される場合が多いです。)
最大判昭和53年12月20日金法896号42頁以下
共同相続人のうちの一人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその一人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由(たとえば、戸籍上はその者が唯一の相続人であり、かつ、他人の戸籍に記載された共同相続人のいることが分明でないことなど)があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず

※合理的な事由とは、自分以外の相続人がいるとは知らない止むを得ない事情があった場合を指します。
例えば、死後認知により被相続人との親子関係が確定される場合、他人の子が実子として届けられている者が共同相続人にいた場合(藁の上の養子)が挙げられるでしょう。

すなわち、侵害者たる共同相続人が相続回復請求権の消滅時効を援用するためには、侵害者が善意かつ無過失であることが必要とされています。
侵害者たる共同相続人が他の相続人がいることに気付いていた場合や自分だけが相続人であると信じていることについて合理的な事由がない場合においては、たとえ相続開始の時から20年を経過したときにおいても、消滅時効を援用することができないとされています。

このように、昭和53年判決において、884条の消滅時効の利益を享受できる侵害者が限定されました(主観的事情による884条の適用制限)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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