相続回復請求権と共同相続人①相続権の侵害はあるのか

掲載日 : 2014年2月20日

相続回復請求権は侵害を知った時から5年間行使しない場合は時効にかかります。または相続開始の時から20年を経過したときも、同様とされています(884条)。

相続回復請求権は、表見相続人(相続に全く無関係な第三者)との関係よりも、共同相続人の間で問題になることが多く見られます。通常、相続財産を占有等しているのは、それなりの相続権を有する者だからです。
しかし、共同相続人は、相続人として、自己の持分の範囲で相続権を有しています。このような共同相続人が「相続権の侵害」をすることがあるのかが、問題になります。

共同相続人に「相続権の侵害」はあるのか
しかし、自己の持分を超える部分に対する権利に関しては、これを合理的な事由もなく占有管理すれば、何の権利もない第三者が勝手に占有管理しているのと同じこととなります。
その意味で、共同相続人も「相続権を侵害」するということは考えられます。

最大判昭和53年12月20日金法896号42頁以下
共同相続人のうちの一人又は数人が、相続財産のうち自己の本来の相続持分をこえる部分について、当該部分についての他の共同相続人の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、他の共同相続人の相続権を侵害している場合は、右の本来の相続持分をこえる部分に関する限り、共同相続人でない者が相続人であると主張して共同相続人の相続財産を占有管理してこれを侵害している場合と理論上なんら異なるところがない。

【参考】
戦前にも民法884条と似た条文がありますが、その当時の解釈として「この消滅時効を援用できるのは、表見相続人(ではあるが、全くの無権利者)である」という立場が有力でした。

しかし、戦前は家制度があり、前戸主である親から家督を譲り受けた新戸主である子だけが相続人となり、前戸主に他に子がいたとしてもその子は相続について無権利者でした。つまり、子らの相続争いといっても「非相続人」対「相続人」という図式がありました。
一方、戦後は共同相続制度が採られ、子は全て相続人になったため(887条1項)、子らの相続争いは「相続人」対「相続人」という構図を描くことになりました(潮見「相続法[第2版]」弘文堂303頁以下)。

だとすれば、相続争いは共同相続人間でも起こり得るわけで、その争いを早期に解決しようとする884条の適用を、無権利者・非相続人に限る必要はありません。
この点について昭和53年判決はこれを肯定し、共同相続人にも相続権の侵害は考えられる、とした解釈をしています。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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