相続回復請求権の相手方

掲載日 : 2014年2月19日

相続によって取得した権利が侵害されている場合であったとしても、その侵害の排除を求める場合に常に884条が適用される訳ではありません。
相続に無関係な第三者による相続財産の不法占拠などの場合には、相続による権利変動を安定させることが問題になっておらず、このような侵害者に対する権利行使は相続回復請求権の行使とはいえないので884条も適用されません。

相続回復請求権の相手方
相続に関し物権的請求権が問題となる全ての場面に884条が適用されるという訳ではなく、その相手方がCというような表見相続人であることが必要です(下図参照)。そのような者によって「外見上相続」が生じたという事実状態を確定させるのが、同条の趣旨だからです。
すなわち、「相続財産に対する侵害であるならその侵害の排除を求めること全てが相続回復請求権を行使である」という訳ではなく、結果として、884条による消滅時効が援用できる場合も限られています。

相続回復請求権の関係図

例えば、生前Aがその所有する自転車を相続に無関係な第三者Dに盗まれ、そのままだったとします。この場合、Dに対する自動車の返還を求める権利(物権的請求権)を行使できるのは、真正相続人Bです。

そこで、Bが訴訟で勝とうとすれば、自ら自転車の所有権を有していることを主張立証しなければならず、通常は、Aが自転車を所有していたこと及びBがこれを相続したことを主張立証していくことになります。つまり、Bが自転車を相続したこと、即ち、Aが死亡した事実・BがAの子であるという事実(このような事実が存在して相続という法的効果が発生します、882条、887条1項、896条)が訴訟における争点になります。

この訴訟の中で、Dは「Bが相続人でないこと」を主張し争うこともできます。
すると、一見この訴訟も「相続」に関する訴訟で相続回復請求権(884条)の対象になるかのように思えますが、この例では、昭和53年判決が述べる「外形上相続」があったかどうかは問題になっていないので、884条の対象外ということになります。

最大判昭和53年12月20日金法896号42頁以下
民法884条の相続回復請求の制度は、いわゆる表見相続人が真正相続人の相続権を否定し相続の目的たる権利を侵害している場合に、真正相続人が自己の相続権を主張して表見相続人に対し侵害の排除を請求することにより、真正相続人に相続権を回復させようとするものである。そして、同条が相続回復請求権について消滅時効を定めたのは、表見相続人が外見上相続により相続財産を取得したような事実状態が生じたのち相当年月を経てからこの事実状態を覆滅して真正相続人に権利を回復させることにより当事者又は第三者の権利義務関係に混乱を生じさせることのないよう相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期にかつ終局的に確定させるという趣旨に出たものである。

結局、同じ物権的請求権とはいえ、884条は、B(真正相続人)のC(表見相続人)に対する請求については適用されますが、BのD(相続に無関係な第三者)に対する請求については適用されません。
これを昭和53年判決は以下の通り表現しています。

最大判昭和53年12月20日金法896号42頁以下
相続財産に関して争いがある場合であっても、相続に何ら関係のない者が相続にかかわりなく相続財産に属する財産を占有管理してこれを侵害する場合にあっては、当該相続財産がたまたま相続財産に属するというにとどまり、その本質は一般の財産の侵害の場合と異なるところはなく、相続財産回復という特別の制度を認める理由は全く存在せず、法律上、一般の侵害財産の回復として取り扱われるべきもの

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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