相続回復請求権の消滅時効②早期かつ終局的な確定についての考察

掲載日 : 2014年2月18日

相続回復請求権が行使された場合には消滅時効があります。
これは、当事者等に混乱を生じさせないよう、相続による権利変動を早期かつ終局的に確定させ、相続に関する争いは極力長引かせないとする制度趣旨によるものとされています。

ちなみに、この場合に何故「早期かつ終局的に確定」させる必要があるのかについての説明は、難しいところがあります。

明治民法の影響
明治民法966条本文は「家督相続回復ノ請求権ハ家督相続人…カ相続権侵害ノ事実ヲ知リタル時ヨリ五年間之ヲ行ワサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス」としていて、これが993条で遺産相続にも準用されていました。
現在の民法884条は、これを引き継いだものです。明治民法下では、「家督相続」というものがあり、このような「一家一族ノ為メ並ニ第三者ニ対シテ種々ノ重大ナル利害関係ヲ有スル事項」であることが、5年という短期の時効消滅を認めた理由といえました(昭和53年判決判例解説〈昭和53年民事篇〉563頁)。
しかし、現在ではそのような説明も困難です。

有力な説明
有力な説明としては、「一方で、侵害の事実を知りながらそれを放置している被侵害者がおり、他方で、被侵害者の存在を知らないで、かつ、知らないことに過失がないまま、使用・収益の事実を積み重ねてきた侵害者がいる。そのようなときに、事実を積み重ねてきた者を保護することがあってもおかしくないだろう。少なくとも立法政策としては十分にありうることだと思われる」とするものがあります。
(道垣内「民法解釈ゼミナール5親族・相続」有斐閣170頁)

戸籍制度からの説明
中でも、その立法政策として「戸籍制度」を指摘し、「わが国においては、遺産占有は通常は戸籍の記載に従って行われ、相続登記も戸籍の記載と連動して行われるために、このような表見相続を争う事例とは、必然的に、戸籍に記載された法定相続人の地位を争う類型の事案となる」として、「相続回復請求権とは、原則的に、戸籍上の相続人でない真正相続人が戸籍上の表見相続人に相続回復を請求する権利」と捉え、このような戸籍に記載された者の地位を早期に安定させるのが884条の趣旨だとする説明があります。
(水野「相続回復請求権に関する一考察(現代社会と民法学の動向下)」有斐閣441頁以下、特に418頁)

そして、この見解は、実親子関係確認の訴えを制限しようとする最高裁の立場とも通じるところがあります。
例えば、下図のC(取り違えられてAの戸籍に入った子)等について、その保護の見地から、B(真正相続人)の請求を制限することを理論付けるものとして、説得力を有しています。時間もたってAも死亡した後「あなた(C)とAは親子ではない」といわれてしまうとCとしては居た堪れない場合も多いのではないでしょうか。

相続回復請求権の関係図

※実親子関係確認の訴えについては、遺産分割協議の進め方②相続人等の確認(藁の上の養子)、を参照ください。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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