相続回復請求権の消滅時効①884条の制度趣旨

掲載日 : 2014年2月17日

相続財産の本来の所有者である相続人は、侵害者に対して、所有権に基づき相続財産の返還等を求めることができ、これを物権的請求権といいます。
この相続財産の帰属を巡って真正相続人と表見相続人が争われている状態が相続回復請求権の問題です。

相続回復請求権の消滅時効
物権的請求権は消滅時効にかからないとされていますが、これが相続回復請求権の問題とされると「時効によって消滅する」とされています(884条)。ですから、単に物権的請求権が行使されたと全く同じ場合とはいい切れず、何故、それが時効によって消滅するのか、その違いを明らかにしなければなりません。

相続回復請求権(884条)の趣旨
所有権に基づく物権的請求権が時効にかからないことに比べると、相続権の侵害に対する回復請求は侵害を知った時から5年間行使しない場合は時効にかかり、権利が制限されています。

これは相続による権利変動を早期に安定させるための制限であると言えます。
例えば、表見相続人が相続財産を取得している事実状態が生じた後、相当な年月を経てからこの事実状態を覆し、真正相続人に権利を回復させた場合、当事者または第三者の権利関係に混乱を生じさせる恐れがあります。

つまり、当事者等に混乱を生じさせないよう「表見相続人が、外見上相続により相続財産を取得した事実状態を、早期かつ終局的に確定させる」ということです。「相続に関する争いは、なるべく長く尾を引かないようにすることに、この制度の存在意義がある」とされるところです(鈴木「相続法講義」創文社55頁)。

そこで、以下の判決の通り、C(表見相続人)のB(真正相続人)に対する所有権の行使には消滅時効の援用が認められる場合があります。

相続回復請求権の関係図
最大判昭和53年12月20日金法896号42頁以下(以下、昭和53年判決)
民法884条の相続回復請求の制度は、いわゆる表見相続人が真正相続人の相続権を否定し相続の目的たる権利を侵害している場合に、真正相続人が自己の相続権を主張して表見相続人に対し侵害の排除を請求することにより、真正相続人に相続権を回復させようとするものである。そして、同条が相続回復請求権について消滅時効を定めたのは、表見相続人が外見上相続により相続財産を取得したような事実状態が生じたのち相当年月を経てからこの事実状態を覆滅して真正相続人に権利を回復させることにより当事者又は第三者の権利義務関係に混乱を生じさせることのないよう相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期にかつ終局的に確定させるという趣旨に出たものである。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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