相続回復請求権の法的性質(集合権利説)

掲載日 : 2014年2月16日

相続回復請求権とは、相続人が有する相続権を他人が侵害している場合、相続人が侵害者に対し、相続財産の返還等を請求し、相続人の地位としての回復を請求することができる権利をいいます。

なお、相続財産の本来の所有者である相続人は、侵害者に対して、所有権に基づき財産の返還等を求めることができ、これを物権的請求権といいます。

【物権的請求権の例】

  • 返還請求権:所有権が占有によって侵害されている場合にその返還を請求すること
  • 妨害排除請求権:所有権が占有以外の態様(所有者でない者の登記がある場合等)によって侵害されている場合にその排除(その登記の抹消等)を請求すること
  • 妨害予防請求権:侵害されるおそれがあるとき(隣地から土砂が崩れ落ちてきそうになっている場合等)にそれを予防すること

相続回復請求権の法的性質
民法884条は「相続回復の請求権」としていますので、物権的請求権とは別個の請求権が存在するようにも思えますが、そのような特別な請求権は存在せず、個々の財産を基準にした権利・法律関係が存在するに過ぎないとされています。

そのような権利・法律関係が相続によって取得され、しかも、その相続関係について表見相続人が侵害していると真正相続人が主張する場合を、相続回復請求権が行使されたと考える訳です。

例えば、不動産の登記が侵害者(表見相続人)名義になってしてこれを占有している場合、侵害者名義の登記を自己名義へと変更を求める物権的請求権(妨害排除請求権)と侵害者に対し自らへの明け渡しを求める物権的請求権(返還請求権)の2つを行使することが可能ですが、この2つの権利を集合して(同時に)行使しているに状態が相続回復請求権を行使している状態といえる訳です。

このように、相続回復請求権といっても独立した権利ではなく、侵害者名義の登記に関する物権的請求権(妨害排除請求権)や、侵害者の占有に関する物権的請求権(返還請求権)の集合に過ぎないと考える訳で、このような見解を「集合権利説」といい、実務上とられている見解といえます。

【参考:戦前の戸主権】
戦前は、家制度の下で「戸主権」というものが存在し、その戸主権と財産権が「家督相続」によって、前戸主から新戸主へ包括的に譲渡されるという、単独相続の形式を採っていました。

しかし、現在では、遺産は共同相続人間で個々に分けられ、これとは別に「戸主権」というものも存在しません。個々の財産を離れた「相続権」というような包括的請求権は、日本では認められていません。従って、このような包括的請求権の存在を認め、これが「相続回復請求権」であると説明することは難しいと思われます。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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