相続回復請求権とは?

掲載日 : 2014年2月15日

相続回復請求権とは
相続人が有する相続権を他人が侵害している場合、相続人が侵害者に対し、相続財産の返還等を請求し、相続人の地位としての回復を請求することができる権利をいいます。

民法は「相続回復の請求権は、相続人…が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」としています(884条本文)。
この条文について、幾つか例を挙げながら、簡潔に解説してみます。

相続回復請求権の具体例
1)子の取り違えに関する相続関係
病院内で子供が取り違えられた事件を題材にした「そして父になる」という映画が話題を呼びました。
この場合の父親をA、他の父親の戸籍に入ったAの真実の子をB、取り違えられてAの戸籍に入った子をCとして、Aが死亡した場合の取扱いを検討してみます(Aの妻は既に死亡しているものとします。)。

相続回復請求権の関係図

Aが自宅(以下、本件建物といいます。)を残して死亡した場合、戸籍上Aの子はCになっているので、一見CはAの相続人と思われます。
※このようなCを講学上「表見相続人」と呼んでいます。ただ、後述しますが、判例では「表見相続人」とは、もう少し狭い意味で用いられており、CがBの相続権を侵害することについて善意・無過失であった場合に限られています。

しかし、親子関係は血縁で決まるので、Aの子はBであってBが相続人ということになります。
※このようなBを講学上「真正相続人」と呼んでいます。

つまり、本件建物の所有権を相続によって取得するのは、CではなくBです。

 

2)相続回復請求権の行使
そこで、Bは所有権に基づき、仮に本件建物の登記がC名義に変わっているなら自己名義への変更を、仮に本件建物にCが居住しているなら自らへの明渡しを、それぞれCに請求することが出来ます。
このような所有権に基づく請求権を「物権的請求権」といいます。

表見相続人の具体例
表見相続人の例としては、以下を挙げることができます。

  • 相続欠格者・相続を廃除された者
    この点については、相続欠格とは相続廃除とは 、を参照ください。
  • 無効な遺言によって遺産を譲り受けた者
    遺言が無効になる場合については、遺言能力とは①遺言無効の基礎知識 自筆証書遺言の要件①全文自書、を参照ください。
  • 他人の子を自らの子として届出る藁の上の養子
    詳細は、遺産分割協議の進め方②相続人等の確認(藁の上の養子) 、を参照ください。
    このような子は相続人になりませんが、仮に親にこのような子しかいなかった場合、その親の直系尊属(その親の親)や兄弟姉妹が相続人になります(900条2、3号)。
    すると、直系尊属や兄弟姉妹が真正相続人ということになり、その子(藁の上の養子)は表見相続人となります。
  • その他 
    子がいないものとして、直系尊属や兄弟姉妹が(表見)相続人として扱われたものの、死後認知(781条2項)等が判明した場合があります

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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