相続欠格事由5号に関する判例①判決の概要

掲載日 : 2014年2月1日

平成9年判決について(最3小判平成9年1月28日)
事案は複雑なので、平成9年判決を理解する上で必要な程度まで簡略化し説明します。

A(被相続人)は、不動産(以下、本件不動産といいます。)を有していたのですが、それを売却し代金を受け取った後、移転登記手続が済む前にAが死亡しました。
Aは生前「本件不動産の売却代金はYの経営する会社に寄付するのでYは会社の債務の弁済に充てること、他の兄弟も承諾すること」という内容の自筆証書遺言を作成し、Yに預けていました。しかし、その遺言書はAの死後Yの元には存在せず、現在も所在不明なので他の共同相続人に示すことができずにいました(Yは、遺言の趣旨内容を説明した上で「遺言書は会社の担当者が焼き捨てた」と説明していました。)。
ただ、移転登記手続を済ませる必要があったので「Yが全ての遺産を相続し他の共同相続人には一定額の調整金を支払う」旨の遺産分割協議が成立したところ、共同相続人の一部(以下、Xといいます。)から「遺言を破棄又は隠匿した」Yは相続欠格者であり、遺産分割協議が無効であることの確認等を求める訴えが提起されました。

かかる事案に対し、第1審が「遺言の内容はYにとって有利なものであった」とした認定を援用した上で、控訴審は、Yが遺言を破棄又は隠匿したか否かの事実認定を留保したまま、「二重の故意」論を採用し、Xの請求を棄却した第1審の判断を支持しました。
【二重の故意】
相続欠格事由5号に該当するためには、①遺言書を故意に偽造、変造、破棄又は隠匿すること加え、②自らが相続上有利な地位を得ようとする積極的な動機・目的が必要と主張する見解

これについて、Xは上告したのですが、平成9年判決もその上告を棄却しました。

相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄、または隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者に当たらない。

昭和56年判決について(最2小判昭和56年4月3日)

A(被相続人)には、妻X1と3人の子X2、Y、Bがいたというもので、X1、X2(以下、Xらといいます。)及びYとBの間には別件訴訟が係属していました(Xら及びYは、同じ弁護士Cを訴訟代理人としていました。)。
ところが、A死亡後にAの自筆証書遺言が発見され、その遺言内容はBとの訴訟でXらにとって有利なものでしたが、自書の署名に関する押印がありませんでした。そこで、Cのすすめにより、Xらは、検認申立をしたのですが、形式不備も指摘されていたことから、検認の日までにAの押印もXらがしてしまったというものです。
ただ、その遺言内容は、Yとの関係ではXらに不利であったため、後日、Xらは、Yとの関係でその無効確認請求訴訟を提起しました。

その訴訟の中で、Xらが、遺言を「偽造又は変造」した相続欠格者であるかどうかが争われました。
控訴審がそれを否定しYが上告したところ、昭和56年判決は以下の通り、結果として原判決を支持しました。

相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときには、右相続人は同号所定の相続欠格者にあたらない。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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