不動産の時効取得とは?要件と占有期間│弁護士 浜本光浩

掲載日 : 2018年2月23日

時効取得とは
自分のモノだという意思を持って、他人の所有する不動産を、平穏かつ公然と一定期間占有した場合、その所有権を取得できる制度のことを言います。
他人の土地や建物を無断で占有している者に、一定の要件のもとで自分のモノであると主張できる権利を与える制度です。

時効取得の要件
時効取得が認められる要件は以下の通りです(民法162条)。
1.所有の意思のある占有であること
2.平穏かつ公然の占有であること
3.他人の物を占有していること
4.一定期間の占有の継続があること
5.占有開始時において善意無過失であること(短期取得時効の場合のみ)

1.所有の意思のある占有
占有とは、物に対し事実的支配をすることですが、単に自分のために占有するという意思では足りません。
時効取得を主張するためには、「所有の意思」を持っていることが必要です。
他人の所有権を認めながら占有していても取得時効は主張できません。
例えば、賃貸マンションを借りた場合、賃借人はマンションの部屋を占有していますが、所有者として占有している訳ではないため、時効取得は認められません。
また、他人からの預かりものを占有していても、所有の意思は認められません。

2.平穏かつ公然
占有が脅迫や暴行などの行為を用いているものでないことや、占有状態が分からないように隠ぺい工作などをしていないことが必要となります。

①平穏
占有の取得及び保持が法律上許されない行為(脅迫・暴行など)によらないこと
②公然
占有の取得及び保持について秘匿しないこと(表立って占有)
平穏かつ公然の要件は、占有の取得時だけではなく、占有を継続している期間中も必要となります。
例えば、占有を秘密にしたいと思って、途中でこっそり占有状態が分からないようにしてしまうと時効取得は主張できません。

3.他人の物を占有
当然ですが、他人の物を占有し、これを時効取得することになります。

4.一定期間の占有の継続
取得時効が成立するためには、占有が一定期間継続することが要件となります。

一定期間「占有」が途切れずに継続されている必要があります。
ただし、2つの異なる時点において、占有をした事実の証明が可能である場合、その2つの時点の間は占有が継続していたものと推定されます(民法186条2項)。

5.占有開始時における善意無過失
時効取得は、長期の取得時効と短期の取得時効があります(民法162条)。
このうち、短期の時効取得10年とされており、占有者が、占有開始時において、自分に所有権があるものと信じており(善意)、かつ、通常人であれば自己の所有する不動産であると信じても無理がないといえる状況であること(無過失)が必要になります。

①善意
自分の不動産であると信じていること
②無過失
自己の所有する不動産であると信じるについて過失のないこと

「善意」、「無過失」は、占有開始時点においてのみ必要とされます。
また、取得時効を主張する者は、自分が無過失であることを証明しなければなりませんが、所有の意思があること、善意であること及び平穏かつ公然と占有していることは推定されます(民法186条1項)。

長期の取得時効(20年)
占有開始時に、自己の所有する不動産であると信じるについて過失があり、短期の取得時効が成立しない場合であっても、占有者は、20年間にわたり、「所有の意思をもって」、「平穏かつ公然に」、「他人の物を」、「占有する」ことで、取得時効を主張することができます。なお、所有の意思があること及び平穏かつ公然と占有していることは推定されます(民法186条1項)。

【コラム執筆者】
きっかわ法律事務所
弁護士 浜本 光浩