共有物を単独使用する共有者に対する金銭賠償が否定された事例

掲載日 : 2013年12月9日

前回のコラムで,共有者のうちの一人が共有物を単独で使用している場合,単独で使用している共有者が単独で使用することが出来る権原について主張,立証しない限りは,他の共有者は自己の持分割合に応じて,単独で使用する共有者に対して金銭賠償を求めることができることになることを紹介しました。

今回は,「単独で占有することができる権原」について判例がどのような考え方をしているのかを紹介します。

共有物を単独使用する共有者に対する金銭賠償が否定された事例①
最三小判平成8年12月17日判決は,共同相続人の一人が相続開始前から相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたところ,被相続人の死亡後,他の共同相続人から持ち分を超える使用による利益の不当利得の返還を求められた事案です。

判決は,共有不動産である建物が,被相続人と同居してきた相続人の居住の場であり,同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると,遺産分割によって不動産の所有関係が最終的に確定するまでの間は同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえることを理由に,不当利得返還請求を認めませんでした。

最三小判平成8年12月17日判決
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右同居人との間において,被相続人が死亡し相続が開始した後も,遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は,引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって,被相続人が死亡した場合は,この時から少なくとも遺産分割終了までの間は,被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり,右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものと言うべきである。

共有物を単独使用する共有者に対する金銭賠償が否定された事例②
続いて,最二小判平10年2月26日判決は,共有不動産を共同で使用してきた内縁の夫婦の一方が,内縁配偶者の死亡後,死亡した内縁配偶者の相続人から,持ち分を超える使用による利益の不当利得の返還を求められた事案です。

判決は,特段の事情がない限り,その一方が死亡した後は他方が共有不動産を単独で使用することに対して合意が成立していたものと推認するのが相当と判断しました。

最二小判平10年2月26日判決
内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは,特段の事情のない限り,両者の間において,その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。

まとめ
最二小判平成12年4月7日は,原則として,共有者のうちの一人が共有物を単独で使用してい
る場合,他の共有者は自己の持分割合に応じて,単独で使用する共有者に対して金銭賠償を求め
ることができることを明らかにしました。
平成12年判決→共有物を単独使用する共有者に対する明渡請求と損害賠償請求

一方,上記平成8年判決および平成10年判決からは,被相続人と同居してきた共有者の単独か
つ無償の占有使用を保護する必要性が高いことが認められる場合において,いずれも被相続人と
「同居」してきた者の無償の利用関係を保護していることが分かります。

このような判例の状況に照らすと,単独で使用する共有者に対する金銭賠償が認められるか否か
については,共有状態が作出される以前の共有物の使用状況,共有状態に至った経緯などが大き
な判断要素となりそうです。

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【コラム執筆者】
アクシス国際法律事務所
弁護士 三村 雅一