遺留分侵害額の算定│特別受益④最高裁と学説の見解の違い

掲載日 : 2013年10月25日

以下の計算式を定めた、平成8年11月最高裁判決のポイントのうち、②の点について簡単に説明します。

遺留分算定の
基礎となる財産額
相続開始時の財産額+贈与額-債務額 ・・・①
遺留分額 遺留分の基礎となる財産額×遺留分の割合×法定相続分
-特別受益額(贈与額)  ・・・②
遺留分侵害額 遺留分額-相続によって得た財産額
-負担すべき相続債務   ・・・③

特別受益額に対する最高裁と学説の見解の違い
この判例は、②で指摘したとおり「遺留分額」を算定する段階で、特別受益額を差し引いています。
この点、学説では「遺留分侵害額」を算定する段階でこれを差し引くものが多いです。例えば、遠藤外編(担当上野)「民法(9)相続[第4版]」251頁以下では「遺留分の額は、遺留分算定の基礎となる財産額に、その者の遺留分の率を乗じたものである」とした上で、

遺留分侵害額=遺留分算定の基礎となる財産額×当該相続人の遺留分の率-当該相続人の特別受益額-当該相続人の純相続分額 とされています。

しかし、平成8年11月最高裁判決の判断は、この点で異なります。これは、1029条1項の「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」に「特別受益」を加える根拠が1044条を通じた903条1項の解釈ということであれば、同条項では更に「算定した…中からその…贈与の価額を控除」するとされている以上、これと同様に考えるべきとされたことによるものと解されます。

【見解の違い:具体例】
この見解の違いを具体例で示してみると、例えば、Aが死亡し、遺言で子Bに全財産(現金3,000万円)を相続させたとします。もう1人の子Cは遺言では何も受け取らなかったのですが、生前に1,000万円を受け取っていました。この場合、以下の通り、結論としては同じなのですが、それぞれが使う「遺留分額」という言葉は異なる意味を持っているということになります(窪田「家族法第2版」有斐閣518頁)。

有力説
Cの遺留分額 遺留分の基礎となる財産額(4,000万円=現金3,000万円+生前贈与1,000万円)×1/2×1/2=1,000万円

但し、遺留分侵害額の算定段階で、生前贈与1,000万円が差し引かれるので、その侵害はないということになります。

平成8年11月最高裁判決の立場
Cの遺留分額 (遺留分の基礎となる財産額4,000万円×1/2×1/2)-生前贈与1,000万円=0円

遺留分そのものがないということになります。

  

【関連コラム】
遺留分侵害額の算定│相続債務がある場合の計算方法
遺留分侵害額の算定│特別受益①過去の贈与も遺留分算定に含めるか
遺留分侵害額の算定│特別受益②遺留分減殺請求の対象となるか
遺留分侵害額の算定│特別受益③計算方法
遺留分侵害額の算定│個別に相続する債務との関係
遺留分減殺請求権の行使①その方法
遺留分減殺請求権の行使②その効果
遺留分減殺請求権の行使③価額弁償
遺留分減殺請求と取得時効

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
http://www.m2-law.com/