遺留分侵害額の算定│特別受益①過去の贈与も遺留分算定に含めるか

掲載日 : 2013年10月22日

質問2 : 20年前の留学費は遺留分の算定における特別受益に含まれますか?

ところで、さきほど先生のおっしゃった「特別受益」というのは、どういうものですか。
先生に指摘されたので、今、机の上にあった民法の条文をパラパラっと眺めたのですが、1030条には「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日よりも前にしたものについても、同様とする。」とありました。

私は、アメリカ留学する際、父から1,000万円貰いました。もう20年以上も前のものですし、相続開始前の一年間の贈与ではありません。当時は遺留分なんて考えてもみなかったので、ここにいう「特別受益」にはあたりませんよね。

回答2 : 相続人の受けた特別受益は、①時期にかかわらず「遺留分の算定の基礎となる財産額」に含まれ、②「遺留分減殺請求」の対象になります。

相続人に対する特別受益の時期
残念ですが、あなたの受け取った1,000万円は、そこにいう「特別受益」にあたるので、遺留分額を算定する際に考慮されると思います。

確かに、遺留分算定にあたり考慮される生前贈与については、相続開始前一年間にされたものに限られます(1030条)。ただし、この規定は「相続人」が贈与を受けた場合には適用がありません。
相続人が受けた特別受益となる贈与については、1044条をみると903条が準用されています。すなわち、相続人に対する生前贈与(特別受益)は相続開始前一年間に限定せず、すべて遺留分算定の基礎となる財産額に含まれることになります。

1044条の903条の準用
903条1項は「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」に「相続人中に、被相続人から…生計の資本として贈与を受けた者があるときは…その贈与の価額を加え」るとしており、相続人に対する特別受益が何時なされたかを問題にしていません。これが1044条によって「遺留分について準用」される結果、1029条1項にいう「被相続人が相続開始時において有した財産の価額」にも、相続人に対する特別受益がその時期にかかわらず加算されると解されます。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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