寄与分⑨扶養型

掲載日 : 2013年10月19日

例えば、子が親に対し、生活費として毎月10万円の仕送りをして扶養した場合、これは寄与分として認められるでしょうか。

子は、直系血族として、親の「扶養をする義務」があります(877条1項)。
ですから、10万円が親の生活費として必要なものであるなら、それは扶養義務の履行であり「特別の寄与」とはいえないということになります。

ただ、例えば、子がA、B2人いてその生活水準が同じ場合、本来ならば月々の10万円を2人で5万円ずつ負担しなければいけないところ、Aが1人で10万円を支払っていた場合、この5万円分については「特別の寄与」として、寄与分が認められます(片岡外編著「新版家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版株式会社331頁)。

ちなみに、この場合、AはBに対し、支払った扶養料のB負担分を求償することもできます(879条、家事事件手続法185条、別表2-10)。
Bの負担すべき分を何れの形で精算するかは、Aの意思に委ねるというのが実務上の取り扱いです(前掲片岡329頁以下)。

過去の扶養料の求償
過去の扶養料の求償については、昭和61年9月10日東京高決(判タ637号189頁以下)が参考になります。

A(母)には、B女(精神病院入院中)、C女、D女、E男という4人の子がいました。
CとDは、昭和36年7月から同55年1月までBの国民年金の掛金を半額ずつ負担し、長期入院中のBの医療費も半額ずつ負担してきました。また、Cは、毎月1回Bに面会し、衣類等の費用を単独で負担していました。

ただ、Cは、家庭の主婦で子は成人独立し、夫と2人年金生活をしています。Dは、独身で昭和48年定年退職し、年金生活をしています。ところが、Eは、会社取締役で子も独立し、妻と2人でかなり裕福な生活をしていることから、C、Dは、昭和57年6月、自らが負担した費用を昭和46年に遡って、Eに求償するよう調停を起こし、同59年1月には審判手続に移行しました。

原審は、民法169条に定める定期給付債権の短期消滅時効の制度趣旨にかんがみ、調停申立の5年前に遡る昭和52年6月からの費用の一定額について、Eに求償するよう命じたので、これを不服としたEの抗告に対する決定です。

Eは、Aを扶養する約束でAを扶養したので、Bを扶養する義務がないといった主張をしましたが、その扶養義務の履行も十分ではなく、最終的にはC、DがAの面倒をみたとして、Eの主張を退けました。
その上で、求償できる費用を昭和52年6月以降の分に制限した原審を支持した上で「要扶養者の扶養料のうち本来他の扶養義務者が負担すべき額を現実に支出した扶養義務者は、その扶養料を負担すべき扶養義務者に対しこれを求償することができ、この求償請求に関し審判の申立があった場合どの程度遡って求償を認めるかは、家庭裁判所が関係当事者間の負担の衡平を図る見地から扶養の期間、程度、各当事者の出費額、資力等の事情を考慮して定めることができる」として、Eに一定額の求償を命じました(Cに対し139万7,000円、Dに対し昭和59年1月から毎月末日限り各金2万1,000円)。

ですから、家庭裁判所の裁量による制限はあるものの、一定額の限度で過去に遡り、扶養料の求償はできるということになります。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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