寄与分⑧療養看護型(特別の寄与に関する目安と評価方法)

掲載日 : 2013年10月18日

扶養義務の範囲では認められない
寄与行為は「特別」のものでなければなりません。
例えば、子が親の療養看護をしたとしても「直系血族…は、互いに扶養をする義務がある」とされています(877条1項)ので、その義務の履行の範囲内であれば、寄与分は認められません。

この点につき、以下の判例が参考となります。

広島家呉支部平成22年10月5日審判(家月63巻5号62頁以下)
「被相続人Aは入院する1か月前まで車を運転し、毎日自分でスーパーに行って食材を買い、昼食は自分で作り、店にも出ていた。通院も自分でしていた。」という事実を前提に、相続人の1人のBが「朝と夕方被相続人A宅に行き、朝はパンを焼いたり簡単な朝食を作ったり、夜は夕食を差し入れたりしていた。時々は,被相続人Aが相続人B宅を訪ね一緒に食事をすることもあった。」としても「それは親族間の協力にとどまり、遺産の維持、形成に対する寄与には当たらない。」

「特別」の寄与の目安=要介護度
問題はどの程度であれば「特別」なものといえるかどうかですが、実務では介護保険における要介護度を1つの目安としています。

介護保険法では、要介護状態と要支援状態というという2つの概念が用いられており、要介護状態は1~5に、要支援状態は1~2に各々区分されています(1が一番軽度)。

親が重度の要介護状態で常時付き添いが必要な状態(※)において、子が介護サービスなどを利用せずに介護を行った場合、または介護サービスの費用を負担した場合について、「特別」の寄与が認められます。
※週1、2日程度の療養看護であれば認められませんし、施設に入っている期間は認められません。

【要介護度について】
では、常時付き添いが必要となる要介護状態はどの程度なのでしょうか。
この点、要介護2の段階では「日常生活動作」についても部分的な介護を要する状態として「歩行や起き上がりなど起居移動がひとりでできないことが多く、食事、着替えはなんとか自分でできるが、排せつは一部手助けが必要な状態」とされています。
この日常生活動作にも介護を要することから、要介護2程度以上(要介護2乃至5)の状態に関する療養看護が「特別」の寄与とされています(上原裕之「遺言・相続(高齢者介護と寄与分・試論)」ぎょうせい114頁以下)。

要支援状態 身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について…継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために…継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態
要介護状態 要支援状態よりも重い状態。
身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について…継続して、常時介護を要すると見込まれる状態

「特別」の寄与の評価方法
評価方法としては、基準額×日数×裁量(1~0.6)という数式でなされており、最近の実務では、基準額については「介護報酬基準額に基づく身体介護報酬額」が用いられることが多いようです。
※平成24年4月現在の基準によると以下の通り。
要介護1(4,020円)
要介護2(5,840円)
要介護3(5,840円)
要介護4(6,670円)
要介護5(7,500円)

しかし、寄与分を認めるにしても、事実上の限界があります(この点については「寄与分①遺留分・被相続人の意思(遺贈)との関係」を参照ください。)。
遺産のうち、5割を超えることはまずなく、認められてもせいぜい2~3割程度です。

その意味も含め、1日あたりの金額にこだわるのも生産的ではありません。
例えば、以下の判例では、1日あたり8,000円程度と評価されており、1日あたりの金額としては、前述した5,840円~7,500円を上回るもので、審判例としては高額です。しかし、この事例の遺産総額は約2億1,231万円(但し、特別受益持ち戻し前)で、寄与分として主張された額は約7,366万円でした(平成元年から17年までの介護で、遺産総額の約34%)。
ところが、認められたのは、この程度(同14年から被相続人の死亡する17年まで介護で、遺産総額の4%)ですから、遺産全体からみれば少ないものだったと思います。

大家平成19年2月8日審判(家月60巻9号110頁以下)
被相続人に対する身上監護を理由とする寄与分の申立てに対し、被相続人が認知症となり、常時の見守りが必要となった後の期間について、親族による介護であることを考慮し、1日あたり8,000円程度と評価し、寄与分を876万円と定めた事例

【関連コラム】
寄与分①遺留分・被相続人の意思(遺贈)との関係
寄与分②現実的な遺留分との関係
寄与分③労務提供型
寄与分④財産給付型
寄与分⑤被相続人の経営する会社に対する寄与
寄与分⑥相続人の経営する会社による寄与
寄与分⑦療養看護型(配偶者)
寄与分⑨扶養型

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
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