寄与分⑤被相続人の経営する会社に対する寄与

掲載日 : 2013年10月15日

被相続人の事業に対する寄与ではなく、その経営する会社に対する寄与があった場合、それについても寄与分が認められるのでしょうか。

原則は寄与分とならない
条文(904条の2-1項)上は「被相続人の事業」とされていますので、原則として寄与分にはなりません。

例外として寄与分になる場合
ただ、その実質的理由は「会社に対する寄与により利益を得るのは会社だ」という点にあるのですから、会社に対する寄与が「被相続人の財産の維持又は増加」させる「特別」のものと評価される場合は、例外として寄与分になると考えられます。

例えば、会社に対する寄与行為によって、被相続人の経営する会社の内部留保が促され相続財産たる会社株式の評価が維持・増加した場合や当該会社からの報酬という形を通じて被相続人の相続財産が維持・増加した場合等が考えられます。

寄与が労務提供型の場合
しかし、被相続人の財産の維持又は増加させた特別の寄与が労務提供型の場合、それは賃金センサス等との比較において判断され、例えばそれより少ない場合はその少ない分を寄与分として評価されるのが原則です。

主張される寄与分がその程度の額に留まっていれば問題はないでしょうが、それ以上の額の寄与分の主張がされた場合はどうなるのでしょうか。
会社としては、賃金センサス等に応じた分を支払っていれば十分で、その以上の額が会社に留保され乃至は被相続人の相続財産になったとしても、それは会社乃至は経営者たる被相続人の取り分なので、寄与行為によるものとはいえないのではないかと思われます。
ですから、このような形での寄与分が認められるには、例えば、実際は「被相続人に代わって当該寄与行為をしていた相続人が当該会社を切り盛りしていた」乃至は「共同経営者であった」というような事情が必要ではないかと思われます。

そのような場合には「被相続人が営業権を、相続人が労務をそれぞれ提供して、それで一種の組合契約が存在したと認定し、死亡を組合の解散に準じて残余財産を分配すべきものとし、その残余財産形成の寄与割合を認定するという算定方法」「経営者タイプの場合は、寄与相続人の受べかりし年間報酬額に、被相続人が保持している利益配分額…これを足した上、生活費控除額をマイナスし、計算する」といった例が紹介されており、参考になります(松津節子「平成17年度専門弁護士養成連続講座・特別受益と寄与分」商事法務460頁以下)。

  

なお、労務提供が認められたケースとして、以下の判例が参考となります。

平成3年11月19日高松家丸亀支部審判(家月44巻8号40頁以下)
昭和28年設立の運送会社(有限会社)を営んでいた被相続人Aにつき、その相続人たる子がB、C、D及びEの4人であったという事案について、子C、D、Eが会社で無償乃至は低賃金で働いていた期間があることに加え、Aの相続開始時の財産(約4,860万円)とC、D、Eに生前贈与された財産(4,756万円)が「昭和32年の…経済的苦境に陥ってからも維持され、または、その苦境を乗り切った昭和40年ころから被相続人の死亡した昭和57年までの間に増加されたものであるが、その間の被相続人の年齢は50歳代後半から80歳に至っている」として、運送会社を手伝ってきたC、D、Eの寄与を「相当顕著なものがあったと推認」し、その寄与割合をその財産合計約9,616万円について、Cを35パーセント、Dを10パーセント、Eを20パーセントとした。

寄与が財産提供型の場合
ただ、労務提供についての寄与が、会社や経営者たる相続人の利益に直ちに直結するのは、小規模零細会社にいえることかと思います。これが、ある程度の規模の会社になってくると、会社に利益をもたらす要因は様々になり、財産提供型の寄与でもなければ、その因果関係を認めることが難しくなってきます。

1)寄与が認められた事案
相続人が被相続人の経営する株式会社に資金援助をした場合の判例があります。
実質が個人企業と言いがたい場合であっても、以下の理由により、被相続人に対する寄与と認める余地があるとし、その寄与分を遺産の20%と認めました。

  • 実質的には被相続人と経済的に密着した関係にあること
  • 会社への援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があること
平成8年10月4日高松高裁決定
被相続人AがB会社を経営していたという事案について「B会社はAが創業した株式会社であってAとは別人格として存在しており、その実質が個人企業とは言いがたい。しかし…B会社はAの個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分をAの個人資産に負っていたものであって、Aがその個人資産を失えばB会社の経営は危機に陥り、他方B会社が倒産すればAは生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、B会社とAとは経済的に極めて密着した関係にあったものである。そうすると、B会社の経営状態、Aの資産状況、援助と態様等からみて,B会社への援助とAの資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、Aに対する寄与と認める余地があるということができる。」という一般論を展開した上で、相続人の1人である子のCがB会社にした貸付金1億1,000万円につき、その価値は3,000万円にも満たず「実質的な価値との差額である8,000万円については、寄与として評価する余地がある」とした。

ただ、本件の場合、元々、B会社に対する貸付金というのは、Aに対する貸付金を振り替えたものなので、実質的にはAに対する寄与ともいえ、この結論自体は妥当と思われます。

2)貸付金の問題
しかし、問題が1点、その後のCのB会社に対する貸付金の取り扱いです。
Aの相続開始時の相続財産の価格は約4億3,825万円であり、Cにはその20パーセントの寄与分が認められましたから、実際のところCは8,000万円相当の利益を得たことになります。しかし、B会社に対する債権はそのまま残っています。

この点、原審判は、Cの寄与分の主張を認めませんでしたが、その立場は「現在も経営を継続している会社に対する債権を実質評価することを避けたもの」と評されるところです(坂梨「被相続人が経営していた会社への資金援助を被相続人への寄与と認め20パーセントの寄与分を認めた事例」判タ978号136頁以下)。

結局、前述した「被相続人の経営する会社に対する寄与は、会社が利益を受けたものとして会社との関係で処理されるべきであり、被相続人に対する寄与とはいえない」という原則が問題になってくるということです。

【関連コラム】
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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
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