寄与分②現実的な遺留分との関係

掲載日 : 2013年10月12日

遺留分との関係(寄与分>遺留分)
確かに、法律上、寄与分は遺留分を超える額についても認められる建前になっています。
すなわち、相続人の1人に寄与分が認められ、この寄与分の額が他の相続人の遺留分を侵害することになった場合でも、認められた寄与分について、他の相続人は遺留分減殺請求をすることはできません。しかし、現実的にはそうでもありません。

寄与分の限界
この点に関連する興味深い例として、平成3年12月24日東京高決があります。これは、被相続人A(平成元年5月死亡、農家)の財産が土地建物(農地等)であり、子がB(跡取り)、C、D、Eの4人いたケースです。

原審においては、農家の遺産の維持に貢献し、被相続人の療養看護をしてきたBの寄与分を7割と判断されていました。
しかし、これが自らの遺留分を侵害するとして、Cが抗告しました。

平成3年12月24日東京高決
寄与分及び遺留分制度の趣旨・目的からすれば、遺留分を侵害するような寄与分を定めることは、一般論としては妥当ではないとし、家業である農業を続け、遺産である農地の維持管理をし、被相続人の療養看護を行ったのみでは、Bの寄与分を大きく評価することは妥当ではなく、特別の寄与をした等の「特段の事情」がない限り、他の相続人の遺留分を侵害するだけの寄与分は認められないとしました。

この場合「特段の事情」とは何かが問題になります。

  • 相応の潜在的な持ち分が認められる場合
    例えば、相続開始の時の財産額(1,586万円)について、90.6パーセントの寄与を認めた例があります(昭和59年1月25日和歌山家審判・家裁月報37巻1号134頁以下)。

    ただ、このケースは、寄与分の認められた相続人が、被相続人の相続開始の時の財産(主として宅地・居宅)の90.6パーセントを実は提供したと認められたことに関する事案です。その意味で「特段の事情」とは、相応の潜在的な持ち分が認められる場合ということになるでしょう。
  • 被相続人の財産の維持管理について配偶者の貢献が認められる場合
    例えば、被相続人の財産の維持管理については、その配偶者の貢献度が高いと考えられますが、昭和55年法改正前の配偶者の法定相続分は3分の1であり、それでは少なすぎる場合があったと思います。寄与分が法制化されたのは、昭和55年改正によりますが、それより以前にも寄与分に配慮した取り扱いは行われており、その改正以前であれば、配偶者の潜在的持ち分を評価する意味で「特段の事情」を広めに考える余地があったと思われます。
    ただ、そのような点を考慮して、現在の配偶者の法定相続分は2分の1に改められましたので、現在「特段の事情」認められる場合は、あまり考えられないのではないかと思われます。

ちなみに、この決定は一般的に支持されており、実務もそのような形で運用されていて「現在では、恐らく、遺留分との関係での寄与は最高でも50%とするのが実務の趨勢であり、最も多いのは20%から30%の間ではなかろうか。」と評価されているところです(坂梨「特別受益・寄与分の理論と運用」新日本法規289頁)。結局、現実的には寄与分も遺留分の前には制限を受けることが多いということになります。

原審判 Aが農家であり、Bがその跡取りとして、昭和20年3月以来Aの農業を手伝い、その相続財産である農地等の維持管理に努めるとともに、晩年のAの療養看護にあたってきたことがそれぞれ認められる。
Bの寄与分を7割と評価、土地建物の評価額約5,465万円の7割を引いた残額約1,639万円を4分し、その1(約409万円)に価格がほぼ相当する土地1筆をCに取得させました。
(D、Eについては、両人が遺産を取得しなくともよいと述べていることから、BをしてD、Eに各50万円を支払うよう命じました。)。
東京高決 寄与分の制度は、相続人間の衡平を図るために設けられた制度であるから、遺留分によって当然に制限されるものではない。しかし、民法が、兄弟姉妹以外の相続人について遺留分の制度を設け、これを侵害する遺贈及び生前贈与については遺留分権利者及びその承継人に減殺請求権を認めている(1031条)一方、寄与分について、家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定める旨規定していること(904条の2第2項)を併せ考慮すれば、裁判所が寄与分を定めるにあたっては、他の相続人の遺留分についても考慮すべきは当然である。確かに、寄与分については法文の上で上限の定めがないが、だからといって、これを定めるにあたって他の相続人の遺留分を考慮しなくてよいということにはならない。むしろ、先に述べたような理由から、寄与分を定めるにあたっては、これが他の相続人の遺留分を侵害する結果となるかどうかについても考慮しなければならないというべきである。ところで」原審判の「寄与分の定めは、抗告人の遺留分相当額(約683万円)をも大きく下回るものであって」「前認定…だけでは…寄与分を大きく評価するのは相当でなく、さらに特別の寄与をした等特段の事情がなければならない。しかしながら、原審判には、その判文上からもそのような点を考慮した形跡は少しも窺われないから、原審判は寄与分の解釈を誤ったか、あるいは理由不備の違法があるものというべく、本件は、改めて右の点をも考慮した上で寄与分を定め、遺産を分割すべきものといわなければならない。

【関連コラム】
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寄与分⑧療養看護型(特別の寄与に関する目安と評価方法)
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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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