寄与分①遺留分・被相続人の意思(遺贈)との関係

掲載日 : 2013年10月12日

寄与分とは「共同相続人の中」に「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加」について「特別の寄与」をした者に認められるものです(904条の2-1項)。

すなわち、寄与分は共同相続人中に家業を継続して手伝ったり、療養看護をした場合等、被相続人の財産の維持又は増加について「特別の寄与」をした者に対し、寄与に相当する額を加えた財産を取得させ、相続人の実質的な衡平を図ろうとする制度です。

この場合「被相続人が相続開始の時において有した財産」の価額から、寄与分を控除したものを「相続財産とみなし」具体的相続分を算定します。この点については、以下を参照ください。
具体的相続分とは①法定相続分との違い
具体的相続分とは③寄与分の計算例と特別受益との比較

寄与行為によって、被相続人の財産が維持・増加した場合、それを考慮しないまま具体的相続分を決めると共同相続人間に不公平が生じることから、従前からそのような取り扱いはあったのですが、昭和55年の改正により正式な法制度として、寄与を考慮した相続分が認められるようになりました。

寄与分の法的性質
その法的性質がどのようなものかについては争いがあり「共同相続人間での調整」を意味するという見解もありましたが、これを前提にすると、共同相続人全員に同程度の寄与があった場合、調整は不要で寄与考慮の必要性はないことになります。

しかし、寄与分について、共同相続人間で協議が調わないとき等は「家庭裁判所は、寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める」とされている(904条の2-2項)以上、その考慮は必要とされます。
確かに、寄与分には純然たる権利は無いものの、守られるべき一定の権利に近いもの(財産権的性質)があると考えることになると思われます。

遺留分との関係(寄与分>遺留分)
一定の権利に近いからこそ、法律上、寄与分は遺留分を超える額についても認められる建前になっています。
すなわち、相続人の1人に寄与分が認められ、この寄与分の額が他の相続人の遺留分を侵害することになった場合でも、認められた寄与分について、他の相続人は遺留分減殺請求をすることはできないという形になっています。

この点が「遺留分に関する規定に違反しない範囲内で」でしか効力が認められない特別受益の持戻し免除の場合(903条3項)と大きく異なるところです。その意味で「寄与分>遺留分」という図式が成り立ちます。
ただし、実際の運用としては、遺留分に配慮はされています。この点については、寄与分②現実的な遺留分との関係を参照ください。

遺贈の関係(遺贈>寄与分)
被相続人の意思による遺贈は寄与分に優先し、寄与分による修正を受けません。
寄与分は「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」とされています(904条の2-3項)。相続財産の処分は被相続人の意思に委ねられており、寄与分は一定の権利に近い性質が認められるといえども、純然たる権利として位置づけられていません。その意味で「被相続人の意思(遺贈)>寄与分」という図式が成り立ちます。
このため、遺言により相続財産の全てについて遺贈されている場合、寄与分を考慮することはできないことになります。

遺留分と遺贈の関係(遺留分>遺贈)
遺贈は、遺留分を侵害できないとされているため、遺留分は遺贈に優先します。
すなわち、被相続人が遺贈をし、これが他の相続人の遺留分を侵害した場合、遺留分を侵害された相続人は、その遺贈について、遺留分減殺請求をすることができます。
実際のところ、遺留分が侵害された場合には、真っ先に遺贈から減殺されていきます(1033条)。
これを図式化すると「遺留分>被相続人の意思(遺贈)」となります。

寄与分・遺留分・遺贈の関係
上記のとおり、寄与分は遺留分との関係では優先される建前になっています。また、遺贈との関係においては、寄与分が相続財産から遺贈を控除した額を上回ることができないため、遺贈が優先されます。他方、遺留分と遺贈との関係では遺留分が優先されます。

寄与分・遺留分・遺贈との関係では、寄与分は遺留分に優先する形になっていますが、遺留分より弱い遺贈に優先されています。こうした三者の関係をまとめて「寄与分をめぐるトリレンマ(三竦み)」と表現する見解もあります(窪田「家族法第2版」有斐閣423頁以下)。
一定の権利に近い性質が認められるも、寄与分は純然たる権利ではないので、財産権「的」性質があると表現される訳です。

【関連コラム】
寄与分②現実的な遺留分との関係
寄与分③労務提供型
寄与分④財産給付型
寄与分⑤被相続人の経営する会社に対する寄与
寄与分⑥相続人の経営する会社による寄与
寄与分⑦療養看護型(配偶者)
寄与分⑧療養看護型(特別の寄与に関する目安と評価方法)
寄与分⑨扶養型

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
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