不動産鑑定士の仕事と役割

掲載日 : 2013年10月7日

法律として制度化された背景
昭和30年代、高度経済成長による都市への急速な産業・人口集中を受け、地価が著しく高騰し、国民経済に重大な問題が生じて言いました。
一方、制度化以前、鑑定評価の仕事は官公庁、金融機関、不動産会社などが各々の判断により個別に行われ、鑑定評価額に至る過程も大半が不明瞭でした。また、鑑定評価の信頼度や精度は、鑑定評価を行った者の信用や業務知識等によりまちまちなものでした。
このように、地価高騰の重要な原因の一つとして、合理的な地価形成を図るための制度の欠如が指摘されていました。

このため、合理的に不動産の価格を決定し、この価格情報を不動産市場に提供することを通じて、市場における適正な地価形成に資する役割が必要とされました。
そこで、専門家を確保し、その規制と育成を図るべく、不動産鑑定評価制度が必要とされ、昭和38年に不動産の鑑定評価に関する法律が制定されました(昭和39年施行)。

不動産鑑定士の仕事と役割
不動産鑑定士は、様々な分野で活躍していますが、仕事の内容は大きく分けて公的な仕事とその他(民間)の仕事に分けることができます。

1)不動産鑑定士の仕事

公的な仕事    地価公示 毎年1月1日時点の全国の標準地を評価
公共用地の取得 土地・家屋等の補償を評価
相続税路線価の評価 国税庁の相続税路線価の基礎となる評価
固定資産税評価 各市町村が課税する固定資産税の基礎となる評価
その他(民間)
の仕事    
取引の際の評価 売買価格・新規賃料の設定
裁判上の評価 当事者の一方からの依頼に基づく評価
税務署提出のための評価 同族間・親族間の売買や相続税の申告
会社の合併時の評価 所有不動産の評価

2)不動産鑑定士の役割
不動産の鑑定評価は不動産の適正や価格や賃料を把握することを目的とし、不動産鑑定士は客観的な立場で理論的に評価を行います。

①公的価格
地価公示価格は、一般の土地取引において指標として参考にされ、適正な地価の形成に寄与することを目的としています。
その他の公的価格も、固定資産税の課税や公共事業等において規準として適用されており、鑑定評価の社会的公共的意義は大きいと言えるでしょう。

②その他(民間)の価格
民間からの依頼目的は、遺産分割、売買、賃料の減額や増額、立退きの参考等、多岐にわたりますが、いずれも提出先または相手方の説得材料のための公的な証明として用いられることが大半となります。

確かに、相続税路線価等の公的価格により不動産の価格を計算する方法がありますが、その価格が必ずしも時価を表しているとは限りません。理由には、不動産は個別性が強く、同じように見える土地・建物であっても一つとして同じものがなく、隣の土地であっても価格が大きく異なる場合もあるためです。

不動産の適正な時価を求めるためには、価格に影響を与える様々な要因を調査・分析する必要があります。この点、不動産の鑑定評価にあたって、専門職業家である不動産鑑定士は土地や建物等について、詳細な調査及び諸要因の分析を行い、適正な価格を求めます。
また、不動産の鑑定評価による価格はいずれの立場にも偏らない客観的で公平な価格であり、作成された不動産鑑定評価書は適正な経済価値を証明する書面として有効な資料となり得ます。

また、不動産の鑑定評価により求めた価格は、依頼者のみならず第三者に対しても影響を及ぼし、さらには不動産の適正な価格の形成の基礎となるものであり、その社会的公共的意義は大きいと言えるでしょう。

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【コラム執筆者】
株式会社クラヴィス鑑定事務所
不動産鑑定士 伊東 玉喜