特別受益|生計の資本としての贈与②不動産(建物無償使用)

掲載日 : 2013年10月1日

特別受益における「生計の資本としての贈与」は、単なる「贈与」ではなく「生計の資本」としてのものであることが必要です。その程度でなければ、これを考慮しないまま具体的相続分を算定しても(903条1項)相続人間の不公平にはならないからです。

その意味で「遺産の前渡し」と認められるかどうかが重要であり、不動産に関連し、検討される問題点を説明したいと思います。

建物の無償使用
1)子が親の住んでいる家に無償で同居している場合
子が親の住んでいる家に無償で同居している場合、特別受益は認められないことが多いでしょう。子に独立した占有が認められないことが多いからです(片岡外編著「新版遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版238頁)。

遺産たる建物の相続開始後の使用関係
子が親の住んでいる家に無償で同居していた場合において、親が死亡した場合の家の使用関係はどうなるでしょうか。

この点、最高裁は「相続人にこれを無償で使用させる旨の合意」があったものと推認しています。
ここにいう「相続人にこれを無償で使用させる旨の合意」が具体的にどのようなものであるかについては議論があるようですが、担当調査官の解説によれば「相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約」ということのようです(最高裁判所判例解説民事篇平成8年度1003頁)。そのように考えると、被相続人が死亡するまでは独立した占有権原を持たないとする上記理解とも整合性を有するので相当と思われます。

最3小判平成8年12月17日(判タ927号266頁以下)
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。

2)子が空いている親の建物を無償で使用している場合
子が空いている親の建物を無償で使用している場合はどうでしょうか。
賃料相当額の利益は認められないと思われます(前掲片岡237頁以下)。その程度に至らないまでの利益があったとしても、それは「特別受益」として扱うほどのものではないとも思われます。
そもそも、建物を無償使用するに至った経緯は様々であって、例えば、子が無職であるときは、親の扶養義務(730条)の履行とみられますし、子が親の近くに住んでいてその面倒をみているときは、黙示の持戻し免除(903条3項)が認められることも多いでしょう。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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