特別受益|生計の資本としての贈与①不動産(借地権譲渡と土地無償使用)

掲載日 : 2013年9月30日

特別受益の類型の中でも議論の多い「生計の資本としての贈与」という概念について、簡潔に整理したいと思います(特別利益の基本問題については「特別受益|認められる場合と特別受益者の範囲」を参照ください。)。

単なる「贈与」ではなく「生計の資本」としてのものであることが必要です。生計の資本にならない程度であれば、これを考慮しないまま具体的相続分を算定しても(903条1項)相続人間の不公平にはならないからです。

その意味で「遺産の前渡し」と認められるかどうかが重要であって、不動産の「贈与」はその典型例とされています(家を建てる際の住宅資金の拠出も同様でしょう。)以下では、不動産に関連し、検討される問題点を説明したいと思います。

借地権の譲渡等
借地権が設定されている場合、住宅地であれば底地の4乃至6割程が借地権の価格とされることが多いです(正確には、路線価図で示されています。)。借地上の建物が贈与された場合においては、通常借地権も同時に譲渡されるため、その特別受益としての贈与額は、建物価格に借地権の価格を含めたものとなります。

この点に関連し、親が建物を有し子が土地を有している場合がたまに見かけられます。
それが、親が建物を所有するために借りていた土地を元の地主から子が買い取ったものである場合において、子には借地権相当額が贈与されたと考えられるので、それが特別受益にあたることがあります(東京弁護士会編〈担当御器谷〉「相続・遺言〈Ⅱ特別受益〉」ぎょうせい63頁)。

土地の無償使用
親の土地を無償使用して子が建物を所有している場合はどうでしょうか。無償ということなので、これは使用貸借になり、いわゆる「借地権」ではなく、借地借家法は適用されません。従って、その権利性は弱いのですが、土地上に他人名義の建物が存在する場合、その売却困難性を考慮して、その土地の価格としては、更地価格の1乃至3割が差し引かれるようです。

その分、親の遺産が減ったということなので遺産総額からこれを差し引き、他方、これが子の特別利益とされます。そして、この特別受益の価格を「みなし相続財産」の算定段階で「持戻し」をして、加えます。

こうして「二段評価」をして結局更地価格になるというのが、実務の主流ということです(片岡外編著「新版遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版234頁)。
実際には、その土地を使用している相続人が、引き続き土地を使用すると思われ、その土地を相続する場合が大半であるため、特別受益の問題として顕在化しないことが多いといえます。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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