相続税の物納とは?①物納の要件(物納できる財産)|税理士 成田佳大

掲載日 : 2017年4月29日

相続税の物納とは
相続税の納付は、原則として金銭で一時に全額納付する必要があります。
ただし、納付期限(基本的には相続税の申告期限である相続開始後10か月以内)までに、納付すべき相続税額を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があれば、税務署長から許可を得て、相続財産である不動産などの「モノ」で相続税を支払う方法、物納により納付することができます。

なお、不動産の譲渡に対しては所得税が課せられます。物納も不動産の譲渡の一つでありますが、原則として所得税は課税されません(相続税額を超える財産を物納し、過誤納額として金銭で差額の還付を受けた場合、その過誤納額については譲渡所得の対象となります。)

ただし、物納は申請から実際に収用されるまでに、かなりの日数を要すると思われます。利子税が発生するケースがありますので、ご注意ください(国における物納要件等の審査期間については原則免除されます)。

物納の要件
相続税の物納はどんな場合にでも選択できるわけではなく、以下の要件を満たす必要があります。

①延納によっても金銭で納付することが困難な事由があり、かつ、困難な金額の範囲内であること
②物納財産が納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、定められた財産及び順位で、その所在が日本国内にあること
③申請書に物納手続関係書類を添付して、納付期限までに税務署長に提出すること
④物納申請財産が、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合は、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと

物納困難な事由があること(納付困難な金額が上限)
物納ができる税額については、計算は延納申請税額と同様で、「金銭納付を困難とする理由書」により計算します。異なる部分としては、延納によって納付できる金額を考慮する部分です。

物納許可限度額=延納許可限度額-延納によって納付することができる金額

物納については、まず延納許可限度額を算出します。その金額から、理由書の算式により計算した延納により納付することができる金額を算出し、その差額が物納許可限度額となります。
延納と同様で「金銭納付を困難とする理由書」の記載方法に従って計算しますので、ご注意ください。

申請財産が定められた種類の財産、かつ、定められた順位であること
物納財産の順位は平成29年度改正で次のとおりとなりました。物納財産については、順位が上のものがあれば、優先して物納しなければなりません。
第一順位 国債、地方債、不動産、船舶、上場されている社債・株式・証券投資信託または
投資信託の受益証券等
第二順位 非上場の社債・株式・証券投資信託または貸付信託の受益証券
第三順位 動産

申請書を期限までに提出すること
物納するためには、期限内申告の場合は相続税の納付期限までに、期限後申告及び修正申告は納付すべき日(申告書の提出日)、更正または決定の場合は同通知が発せられた日の翌日から起算して1か月以内に「物納申請書」に「物納手続関係書類」を添付して税務署長に提出する必要があります。
なお、物納手続関係書類には、測量図、境界確認書等があります。申請書に添付する書類が期限に間に合わない場合、届け出1回に付3カ月、最長1年の提出期限の延長が認められます。

物納の適格財産であること
管理処分不適格財産とは物納に適さない財産であり、次の財産が例としてあります。
・担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産
・権利の帰属について争いがある不動産
・境界が明らかでない土地
・耐用年数を経過している建物(通常の使用ができるものは除かれます。)

また、物納劣後財産とは、物納財産ではありますが、他に適当な財産がない場合に限り、申請することができるものをいい、次の財産が例としてあります。
・既存不適格建物とその敷地
・市街化調整区域にある不動産
・建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地
・過去の事件等により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びその隣接不動産

物納の要件は厳しくなっており、実務上物納の申請を行う人は年々減少しています(平成27年度申請件数130件 許可件数69件(国税庁HPより))

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【コラム執筆者】
税理士法人グローバルマネジメント
税理士 成田 佳大