特別受益|認められる場合と特別受益者の範囲

掲載日 : 2013年9月28日

特別受益とは、具体的相続分を算定する上で、必要な概念です(両者の関係については「具体的相続分とは①法定相続分との違い」を参照ください。)。以下、特別受益に関する問題点を、簡潔に指摘・検討します。

特別受益者の範囲
特別受益は「共同相続人中」で問題にされます(903条1項)。ですから、子が生きている間に親から孫に贈与がされた場合、これは特別受益にあたりません。例えば、親A、子B、C、孫D(Bの子)がいた場合、AからBが贈与を受けた後にBが死亡してDが代襲相続(887条1項)したとき、特別受益を加えて孫Dの具体的相続分が算定されることがありますが、考慮されているのはBが受けた特別利益ですから、ここでいう孫への贈与を加えている訳ではありません。

他方、Bが死亡した後、Aが孫Dに贈与をしたとき、Aの死亡についてDがBを代襲相続したのであれば、子Cとの関係で孫Dは「共同相続人」にあたるので、これは特別受益にあたります。

特別受益が認められる場合
特別受益が認められる場合とは「遺贈を受け、婚姻…のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」場合です(903条1項)。ここでは「遺贈」と「婚姻のための贈与」についてのみ説明します(生計の資本としての贈与については、以下をを参照ください。)。

特別受益|生計の資本としての贈与①不動産(借地権譲渡と土地無償使用)
特別受益|生計の資本としての贈与②不動産(建物無償使用)
特別受益|生計の資本としての贈与③現金等(借金の肩代わり・学費等)
特別受益|生計の資本としての贈与④現金等(生命保険金等)

1)遺贈
被相続人の「死亡時」における「相続財産」という概念の中には、遺贈の目的物が含まれています(996条)。以下の表では①に含まれることになります。
ですから「みなし相続財産」の算定において「遺贈」の価額を②に特別受益として加える必要はありません(903条1項)。

みなし相続財産(民法)
①+②  
①被相続人の死亡時の所有財産(相続財産)
②特別受益に該当する生前贈与の評価額

2)婚姻のための贈与
他方「贈与」は全てが特別受益になるのではなく「婚姻のため」になされたものに限ります。これは、婚姻の際に遺産の前渡しが行われることが多いので、これを無視することは共同相続人の公平を害することがあるからです。

そこで「婚姻のため」の贈与がなされたかどうかは「遺産の前渡し」といえるものかという観点から判断すべきです。一般的には、持参金や嫁入り道具はこれにあたりますが、挙式費用や結納金はこれにあたりません。挙式費用は、費消してしまうので渡すというものではなく、結納金は嫁ぎ先に渡すもので相続人たる子に渡すものではないからです。

被相続人が非常に詳細な金銭出納帳をつけていたので、それを根拠に特別受益の主張をしたところ、裁判所が「かつら合わせ、パーマ代、これは挙式費用だから、ダメだとか、そんな感じで評価している。枕の購入代金の500円まで認めています。これは、嫁入り道具だということだと思います。」と詳細に認定したことがあることが、ケース紹介されていて参考になるかと思います(東京弁護士会編〈御器谷担当〉「相続・遺言〈Ⅱ特別受益〉」ぎょうせい75頁参照)。

ただ、特別受益に関する紛争については、攻めよりも守りの方が重要ですので、バランスを崩さないようにしなければならないと思います(この点は「具体的相続分とは②特別受益の計算例と立証のポイント」を参照ください。)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
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