遺産分割審判における使途不明金①預貯金の調査と付随問題

掲載日 : 2013年9月23日

相続の相談を受ける際「被相続人の預貯金が思っていた以上に少ない。」といった話をよく聞きます。これは、使途不明金といわれ、家庭裁判所では「付随問題」とされるものの1つで悩みの種とされています。この点につき、簡潔に説明したいと思います。

預貯金の調査
素人の方が、使途不明金を問題にして遺産分割調停等を起こすとき、裁判所が預貯金を調査してくれるだろうという思いがあります。しかし、使途不明金とは、詰まるところ「見当たらないもの」ですが、遺産分割とは、現存する遺産を分割する手続であって「ない」ものは分割できません。裁判所の本音としては「当事者がわからないものは裁判所だってわからない」というところです(片岡外編著「新版家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版株式会社58頁以下)。

弁護士法23条照会の利用
そこで、この「見当たらないもの」について、凡その目途は当事者がつけなければなりません。相続人は「被相続人の権利義務を承継」する(896条)ので、その気になれば被相続人の預貯金の内容を確かめることはできますが、この点、弁護士に依頼すれば、弁護士法23条照会というシステムがあり、より簡便に預貯金の内容の照会をしてくれます(但し、預金については、支店の特定まで必要であり、大まかにでもその見込みをつける必要があります。調査をするためだけの実費(送料込)として、各地域の弁護士会により様々ですが、一件当たり5千円前後かかるので、手当たり次第にという訳にはいきません。)。

付随問題の説明
このようにして、預貯金の履歴が手に入ります。すると、被相続人の預貯金が、生前多数回又は(或いは)多額に引き出されており、また、死亡後に引き出されていることがあります。被相続人である母をA、依頼者を姉B、相手方を弟Cとすると、その引き出しをしたのがCであるとして「使途不明金」の探求を巡り、遺産分割調停が起こされることになります。

ただ、注意しなければならないのが、遺産分割の審判の対象等になるものについては限界があるということです(詳しくは「遺産分割審判の対象となるもの②債権等(金銭債権・預貯金・株式・社債等)」を参照ください。)。
調停は、当事者が主体となって決断による合意で紛争処理にあたるものなので、比較的緩やかです。裁判所も、3回ほどは調停に付き合ってくれます(前掲片岡59頁)。しかし、それが審判の対象等にならないものであれば、裁判所としても当事者間に合意が成立しない限り、最終的に紛争を処理できません。だからこそ、そのようなものを「付随問題」といい、ただ「問題」にはなるが「付随」に過ぎないからこそ、その点に関する合意の見込みが薄ければ取下げを勧告されるということです。

それでは、どのようなものが審判の対象等となり、或いは、ならないのでしょうか、引き出しが死亡前か死亡後かに分けて検討したいと思います。

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遺産分割審判の対象となるもの①物権等(不動産や賃借権等)
遺産分割審判の対象となるもの②債権等(金銭債権・預貯金・株式・社債等)
遺産分割審判の対象となるもの③現金
遺産分割審判における使途不明金②死亡前の引き出し(特別受益)
遺産分割審判における使途不明金③死亡前の引き出し(被相続人の為にしたという主張)
遺産分割審判における使途不明金④死亡後の引き出し

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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