遺産分割審判の対象となるもの③現金

掲載日 : 2013年9月22日

遺産分割審判の対象になる・ならないという視点から、よくあるものについて簡潔に説明します。

現 金 審判の対象になる

以下の通り、最高裁の判断は「現金」そのものにも「共有」が認められるとするもので、これ自体は妥当と思われます。なので「現金」は共同相続人間で「共有」するものとして、遺産分割審判の対象になります。

この点については、被相続人A死亡の時点で現金であったものを相続人の1人であるYが後に「A遺産管理人Y」名義でしていた預金について争われていました。
この点に関する東京高裁は「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人等の共有財産となり…債権のように相続人等において相続分に応じて分割された額を当然に承継するものではない」としました。
そして、最高裁は以下のように判断しています。

最2小判平成4年4月10日判タ786号139頁以下
相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない…原審の判断は正当

「A遺産管理人Y」名義で預金された場合も共有のままか
ただ、問題は、何故それが「A遺産管理人Y」名義で預金された場合にも「共有」のままなのかという点です。

上記平成4年判例の射程範囲にもかかわるものとして難しい問題ですが、同判例の理解には以下の2つの見解に分かれているとの指摘があります(松原「可分債権と現金」判タ1100号332頁以下)。

  • 「相続人が管理中の現金を不可分物と同一視しただけ」と解する見解
    (山田「遺産分割前に相続分相当の金銭支払を求めることの可否」民商107号6号102頁以下)
  • 「共同相続人間での場面でみるときは、可分債権についてみても相続持分に応じて当然に分割されるものではない」と解する見解
    (塩月「金銭の相続と遺産分割」家月44巻10号1頁以下、特に9頁以下)

これを前提に考えると、上記判例が昭和29年判例(※)を元にして展開されていった実務の流れを根本から変えるものとは思われませんので、前者の立場が相当と思います。
※最1小判昭和29年4月8日
「金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」

だとすれば、本件では、預金が「A遺産管理人Y」という名義で「遺産たる金銭の管理がなされているだけで、銀行への預入によって当該相続財産の性質が変容したととらえるべきではない」という形で説明されると思います。
つまり、最高裁が指摘する「相続財産として保管」されているという点がポイントで「当該金銭がそのまま保存されることが予定され、価値として流通に置かれることが予定されていない場合」であることが重要だということでしょう(道垣内「遺産たる金銭と遺産分割前の相続人の権利」家族法判例百選[第7版]136頁以下)。

その意味で、現金の保管形態が「A遺産管理人Y」のようなもの以外であった場合には、遺産分割審判の対象にならないと解されることもあるかと思います。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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