遺産分割審判の対象となるもの②債権等(金銭債権・預貯金・株式・社債等)

掲載日 : 2013年9月21日

遺産分割審判の対象になる・ならないという視点から、よくあるものについて簡潔に説明します。

金銭債権
その他の可分債権
審判の対象にならない

以下の判例のとおり「当然分割」されるのですから、遺産分割の必要もなく、遺産分割審判の対象にもならないとされています。

最1小判昭和29年4月8日(民集8巻4号819頁以下)
不法行為に基づく損害賠償請求権について、分割債権・債務の原則を規定する427条を前提として「金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」

預貯金 審判の対象にならない
(実務上、全相続人の合意があれば対象になる)

預貯金も「当然分割」されるので、審判の対象として分割することはできません。
実務上は、全相続人の合意があれば審判の対象とすることができるとされていて、調停では「相続人から預金債権を分割の対象としないという積極的な申出がない限り、そのまま分割対象に含めて手続を進めている例が多い」ようです。
しかし、審判では「分割対象に含めることに合意しない事例も少なくない」ということです(片岡外編著「新版家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版株式会社139頁)。

預金については、これも「預金契約の相続が考えられるべきである。相続された預金契約のなかには…銀行所定の手続で、かつ、相続された預金契約の当事者、つまり共同相続人全員の手続が必要となるのではないか…預金契約の全趣旨から考えて取り扱う、というのは一つの立場である」という指摘もあります(林「遺産中の金銭の遺産分割前の帰属」金法1336号6頁以下、特に8頁)。つまり、賃借権と同じように契約上の地位の問題として、審判の対象になるのではないかというという指摘です。
しかし、一般的には預貯金は、可分債権として当然分割されると理解されています(定期については、その解約手続等、若干の問題が残ります。東地判平成18年7月14日金法1787号54頁以下「コメント」参照)。)。
ただ、定額郵便貯金については、取り扱いが異なるので、注意が必要です。

定額郵便貯金 審判の対象にならない
(通常貯金になるまでの10年間は対象になる)

旧郵便局の定額郵便貯金については、旧郵便貯金法(以下、単に旧法という。)7条1項3号により、分割払戻しができないという契約上の制限が付されていて、預入の日から起算して10年が経過するまでの間は通常貯金にはならないとされていました(旧法57条1項)。

その定めは「郵政民営化等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の附則5条により、ゆうちょ銀行との関係でも効力を有するとされていますので、定額郵便貯金は、通常貯金になるまでの10年間は遺産分割審判の対象になると解されます(最2小判平成22年10月8日判タ1337号114頁以下)。

株式や社債 審判の対象になる

株式や社債は、会社に対する一定の法的地位と考えられており、前者には「共有」に 関する定め(会社法106条)があり、後者には「相続」に関する定め(会社法691条2項)があることからして、それは遺産分割審判の対象になると解されます。

国債、投資信託、
ゴルフ会員権等
具体的内容により異なる

国債、投資信託、ゴルフ会員権等がよくある例かと思いますが、その具体的内容によって、様々です。手頃なものとしては、前掲片岡165頁以下が詳しいですが、正確には、弁護士等の専門家に相談されることを勧めます。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

事務所HP :
http://www.m2-law.com/